健康保険法改正案について

最近台湾でもっとも注目されている法律案の一つに、健康保険法改正案がある。「第2世代健康保険」(「第1.5世代健康保険」と呼ばれることもある)という名の改正案は、現行の健康保険制度(即ち第1世代健康保険)の財務悪化を改善するために提出されたものである。

改正案と第1世代健康保険との主要な相違点は、保険料率を計算するための所得基礎、及び保険料率が所得において占めるパーセンテージである点である。各界の利益が異なっているため、この改正案の議論をめぐっては、台湾立法院内で激しい綱引きが行われている。
2011年1月4日、一部の国会議員が退席する中、健康保険法の改正案が可決された。

改正後の内容に関しては、まず所得(即ち保険加入対象報酬)に占める保険料率の上限は6%(初期のパーセンテージは暫定的に4.91%)とされた。次に、保険料率を計算するための所得の基準は2つのものが併用されることになり、第1世代健康保険にすでにある「基本保険料」(即ち、経常的な賃金収入)のほか、「補充保険料」が追加された。「補充保険料」の算定基礎とされる所得には以下のものが含まれる。

  1. 月給の四ヶ月分を超える、保険加入事業者(即ち使用者)から支給される奨励金
  2. 保険加入事業者以外から得たその他の賃金収入(即ち兼職の収入)
  3. 業務執行による収入
  4. 株式配当による収入
  5. 利息所得
  6. 賃貸収入

つまり、個人に年度内の経常的な賃金収入のほかに利息、配当金、月給四ヶ月分以上の奨励金、兼職又は業務執行による所得がある場合(当局が現在公表している資料によれば、二千台湾ドルから所得額の計算を開始し、上限は一千万台湾ドルである)、これらの経常的な賃金収入以外の収入も補充保険料の算定基礎として計算・納付しなければならず、その保険料率は少なくとも2%である。

また、雇用主も補充保険料を負担する可能性がある。雇用主が自己の従業員に対して支払う毎月の賃金所得総額から、その月に従業員のために付保する保険料の額を差し引いた後、なお差額がある場合、この差額についても補充保険料を納付しなければならず、保険料率は暫定的に2%と定められている。これに対し、台湾の主要な工商団体は、このような規定は雇用主の負担を増加させるものである、と公に表明している。

本改正案は、1月26日に台湾政府より正式に公布されている。施行日は未定で、授権された台湾の行政院により決定される。新聞報道によれば、現在、台湾の行政院は2012年1月1日から改正後の健康保険法を実施することを予定している。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は、当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修