台北市当局によるアプリケーションの試用期間の延長要求
台北市政府の法規制委員会は、スマートフォンアプリケーションの返金ルールについてユーザーから苦情が寄せられていることを受け、消費者保護法19条1項における「通信販売又は訪問販売の消費者は、受領した商品を購入するつもりがない場合、当該商品を受領した後7日間以内に、返品又は書面を以って売買契約を解除する旨を企業経営者に通知することが可能であり、且つ理由説明及び費用、代金支払いの必要がない」という規定を引用し、Apple社およびGoogle社にアプリケーションの試用期間を7日まで延長するよう要求した。
当局の命令に対して、Apple社(アジア)は回答期限の締切日である6月23日の直前に遵守する旨を承諾し、且つ即時に自社のiTunes Storeの規約を改正した。この結果、台湾向けのiTunes Storeではユーザーがアプリケーションをダウンロードした日から7日間が試用期間とされ、この期間中は自由に返品することが可能となった。
このアプリケーションの試用期間は、世界各国のiTunes Storeの中で、もっとも長い試用期間となった。一方、Google社側は当局の要求を受け入れず、依然として有料アプリケーションの試用期間を15分間としている。6月27日に台北市政府の法規制委員会の葉慶元委員長は「台北市としては、このように露骨な法律違反を容認するわけにはいかない。
消費者に不利な標準契約条項によって、消費者の権利であるべき払い戻しの請求が、Google社の裁量に委ねられている。」と公言し、Google社は当局から100万台湾ドル(約300万円)の罰金が科せられた。その後、Google社は台湾における有料アプリケーションの販売を直ちに中断した。
このようなアプリケーションの試用期間の問題に対し、台湾においては賛否両論の声が上がっている。今回のApple社による台湾当局への譲歩およびiTunes Storeの規約が台湾向けに改正されたことから見れば、台湾消費者の勝利だという声が出ている。
他方、Apple社およびGoogle社は台湾以外の国において、いずれも15分間のみの短い返品期間を試用期間として設定しているが、目立ったクレームや問題もないとされている。試用期間が7日間まで延長された結果、消費者はアプリケーションをダウンロードした後、アプリケーションの内容(例えばゲーム又は電子書籍など)を存分にプレー、閲覧した後に、試用期間の終了までに払い戻しを要求する可能性が高くなる。
このことから、アプリケーションのサプライヤーに対して非常に大きな影響をもたらすため、Google社のような大手会社も台湾から撤退するという声も出ている。
従って、台湾におけるアプリケーションの試用期間政策に関る今後の展開について、注意する必要がある。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は、当事務所にご相談ください。
【執筆担当弁護士】