日台間、重大な投資協議に調印

台湾と日本は9月22日、「台日投資協議」に調印した。日台断交後、投資に関する協定は数度結ばれてきたが、「自由化」を明文化したのは今回が初めてである。今回の投資協議は日台間の自由貿易協定(FTA)調印への大きな一歩となるとみられている。日台間は正式な外交関係がないため、今回の調印については、日本の交流協会と台湾の亜東関係協会が窓口機関となっている。

今回の協定は全部で26条の条文から構成され、投資先での紛争への対応を想定した投資保護だけではなく、投資の促進、自由化を目指している。今回の協定の柱は、台湾に進出した日本企業が外資としての規制を受けず、地元の企業と同じ扱いになる、「内国民待遇」規定である。台湾企業が日本に進出する場合も同じである。今回の協定の主な内容は、次の通りである。

一、基本的性質
交流協会と亜東関係協会は、日台双方の投資家の相手方区域における投資を保護し、促進するため、取り決められた内容について「必要な関係当局の同意が得られるように相互に協力する」(第1条)。

二、規定内容

  1. 上記協力の対象は、相手方区域において既になされている投資にかかる財産の保護に加え、投資の許認可段階に係る事項を含んでおり、投資の保護・促進・自由化をカバーする包括的なものとなっている。
  2. 主な条文内容
    • (1)投資活動や投資財産の保護に関し、いわゆる「内国民待遇」(第3条)及び「最恵国待遇」(第4条)に相当する無差別待遇が与えられるようにすること。
    • (2)投資活動の条件として特定の要求が課されないようにすること(第7条)。
    • (3)投資家と投資先区域の当局との間で問題が生じた場合には、当事者間の合意を前提に国   際的な仲裁規則を利用して解決が図られるようにすること(第17条)。

2010年の台湾側の統計によると、台湾から見て日本は最大の輸入先(519億ドル)であり、最大の直接投資国(4億ドル)でもある。日台貿易では、日本企業が供給する高級素材、中核部品を台湾企業が使うという補完関係が強い。今回の協定の調印により、日台貿易における企業の自由度はいっそう増すものと見られている。


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【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修