国際間のインターネットショッピングにおける決済代行の刑事責任
新北地方裁判所は2013年6月13日、2013年度金訴字第1号刑事判決において、不特定の者から新台湾ドルを受領して、当該不特定の者のために「アリペイ(支付宝)」のポイントを購入し、チャージした場合も「両替業務」の行為に該当し、銀行ではない者がこのような行為を行った場合、銀行法第29条に違反し、行為者は刑事責任を負うと判断した。
いわゆる「アリペイ」とは、中国のアリババグループが設立した、インターネットにおける支払のプラットフォ−ムであり、その主な目的の一つは、売主・買主双方の取引上の安全を保障することである。例えば、買主及び売主は「タオバオ(淘宝網)(http://tw.taobao.com/、中国最大の商品取引サイト)」で商品取引を行う際に、双方の「アリペイ」口座を代金支払・受領のツールとして利用することができ、また売主を保護するため、「アリペイ」は、買主の口座に商品代金の支払に十分な残高があってはじめて、商品を発送するよう売主に通知する。一方で、買主を保護するために、買主が商品を受領し、検査の上間違いがないことを確認してはじめて、売主の口座に商品代金が入金される(「PAYPAL」、「MoneyCat」、「PAYLINK」等に類似している)。
本件の概要は、以下の通りである。
被告甲は台湾のYahoo!奇摩オークションサイトに、「タオバオ」で商品を購入したいが「アリペイ」口座を持っていない台湾国民のために、「アリペイ」の受領・支払代行サービスを提供する旨の広告を掲載した。その方法は、商品を購入したい顧客が「タオバオ」上の商品の人民元での販売金額を、その時の為替レートで新台湾ドルに換算して甲に渡し、その後甲が甲の「アリペイ」口座にチャージし、かつ中国の売主に「アリペイ」を通じて代金を支払うというものである。甲は、顧客から50新台湾ドルの報酬を受け取ることができるとされていた。
裁判所は、「アリペイ」におけるバーチャルのポイントは人民元による現金と相互に変換することができるため、甲は顧客から新台湾ドルを受領して、当該顧客のために人民元で価格計算する債権債務関係の決済を行ったと言え、このような資金の移転・清算関係は、一種の「両替業務」の行為に該当すると判断した。
銀行法第29条第1項では、「法律に別段の規定がある場合を除き、銀行でない者は預金の受入れ、信託資金・公衆財産の管理の受託又は国内外の両替業務を経営してはならない。」と規定されており、甲は銀行ではないのにこのような両替業務を行ったとして、裁判所は、銀行法第125条、第125条の4の規定に基づき、甲を1年6ヵ月の懲役(執行猶予4年)に処した。
現在中国の「タオバオ」は台湾でかなり人気があるが、原則として、「アリペイ」口座がなければ「タオバオ」では取引ができないため、他人の「アリペイ」口座を通じて取引を行うというニーズが生まれている。しかし、新北地方裁判所の上記判断からすると、新台湾ドルを受領して、他人のためにインターネット上で国際間の決済を行う行為は、違法な「両替業務」に該当する可能性があるので、特に注意が必要である。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は、当事務所にご相談ください。
【執筆担当弁護士】