インターネット上で匿名者を罵倒した場合の法的責任

最近、奇異な刑事事件が発生した。その概要は次のとおりである。
某オンラインゲームにおける匿名「YOLO#41267」という男性Aが、2017年7月に、当該ゲームにおけるチャットルームで、匿名が「JOBA」という男性Bと言い争いとなり、「YOLO#41267」が「JOBA」は役立たずで、くずだと罵倒した。

2人とも互いの本当の身分や氏名を知らなかったが、男性Bは「YOLO#41267」に対し刑事告訴を提起し、屏東地検察署の検察官がIPの位置から「YOLO#41267」の本当の身分を特定し、刑法第309条第1項の公然侮辱罪(公然と人を侮辱した者は、拘留または三百元以下の罰金に処する。)により男性Aを起訴した。

第一審裁判所は、審理の結果、匿名または偽名によりインターネット上で他者と交流することは、実社会における交流との違いはないため、匿名または偽名であってもその名誉権は法的保護を受けると認め、公然侮辱罪は成立すると判断した。また、男性Aは2回罵倒したため、第一審裁判所は男性Aについて2つの公然侮辱罪が成立すると判断し、それぞれ10日間の拘留に処するとし、併合後の刑期は15日間となり、罰金を代替刑とすることができる旨の判決を下した。

男性Aはこれを不服とし、控訴を提起し、第二審裁判所は、審理の結果、2018年7月に無罪の逆転判決を下した。無罪の主な理由は、公然侮辱罪の対象は法人および自然人に限られるところ、「JOBA」はインターネット上のニックネームであって、人格主体を有する自然人ではなく、まして他のゲーマーは「YOLO#41267」が「JOBA」を侮辱したことのみを知っており、「JOBA」の本当の身分が男性Bであることは知らないことから、男性Bの人格または名誉権は侵害されていないため、刑法の公然侮辱罪は成立しないというものである。

本件は小規模な刑事事件であるが、インターネット上の匿名者の名誉権に対し、第一審と第二審の裁判所が完全に異なる認定をしたため、インターネット上で大きな議論を引き起こした。男性Bは上告を提起したとのことであるため、本件は最高裁判所によって最終的な判決が下されることになる。


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【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修