台湾法上の地上権
いわゆる「地上権」とは、民法第832条の規定によれば、「他者の土地の上若しくは下に建築物又はその他の工作物を有することを目的としてその土地を使用する権利」を指します。具体的には、甲が乙所有のA土地上に建物を建てることを希望する場合、地上権を設定する方法により、甲がA土地を賃借し、かつ地上権設定登記を行い、甲は当該土地の地上権者になることになります。
なお、台湾の現行の法制度では、他者の土地を利用して建物を建てたい場合、地上権を利用する方法のほか、地主と賃貸借契約を締結し、当該土地を賃借する方法もあります。この二つの共通点は、いずれも地主に賃料を支払う方式で土地の使用権を取得していることです。
これに対し、この二つの異なる点は、次の通りです。
- 地上権を取得する場合、主管機関に登記しなければその効力は生じません。しかし、賃貸借契約は賃貸人と賃借人が締結しさえすれば有効となります
- 地上権の存続期間について、台湾法上、特別な規定はなく、実務上、70年間存続する地上権が設定されたケースもあります。しかし、土地の賃貸借契約は最長でも20年を超えてはなりません。
- 地上権は譲渡可能であり、また地上権をもって抵当権を設定するための目的物とすることもできます。しかし、土地の賃貸借権は原則として譲渡することはできず、転貸することもできません。
現在、実務上、台湾政府は公有地について、直接、個人に売却するケースはめったになく、大部分は地上権設定の方法により個人に公有地の使用権を取得させ、個人から賃料を取得します。従って、外国企業が台湾の法人又は個人から土地を借用する時には、賃貸者が土地の所有権者なのか地上権者なのかを必ず確認し、後者の場合には、問題が生じるのを避けるため、地上権の存続期間などをさらに確認するべきです。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は、当事務所にご相談ください。
【執筆担当弁護士】