就業サービス法改正

立法院は2018年11月9日に「就業サービス法一部条文改正案」を可決した。

新法の重要な点は以下の通りである。

  1. 新法第5条第2項には、使用者が募集している職務の月給が台湾元四万元に達しない場合、 求職者に賃金の範囲を具体的に知らせなければならないと規定されている。つまり、いままで使用者が よく求人広告の賃金欄に記載していた「応相談」は、今後、月給が台湾元4万元に達しない職務に使用 してはならないことになる。使用者がこれに違反した場合、同法第67条の規定に基づき、台湾元6万元以上、 30万元以下の過料が課される。
  2. 旧法では、使用者は求職者又は雇用する従業員について、種族、階級、言語、思想、宗教、党派、 本籍、出生地、性別、性的指向、年齢、婚姻などを理由として、差別してはならないと規定されていた。 新法第5条第1項ではこれに加え、使用者は容貌、感覚・身心障害、星座、血液型又は過去の労働組合会員の身分を 理由として、差別してはならないと規定されている。使用者がこれに違反した場合、同法第65条の規定に基づき、 台湾元30万元以上、150万元以下の過料が課される。
  3. 専門業務従事者である外国人の台湾での就職制限を緩和するため、新法第46条では外国人が台湾で就業 する場合おいて、短期補習教育業務を行うときには、「外国語」しか教えてはならないという規定が廃止された。 よって、今後は専門人材である外国人が台湾に渡り、台湾で補習教育業務に従事する場合には、外国語以外の教学業務 に従事することができるようになった。
  4. 外国籍の労働者の人権を保障するため、新法第40条の規定および第67条おいて、人材紹介業者が外国籍の 労働者が使用者などからセクハラ、人身売買、自由妨害、重傷害又は殺人行為を受けた疑いがあることを知り、24時間以内 に主管機関などに通報しなかった場合、台湾元6万元から30万元の過料に課されると規定されている。

実務上、多くの会社は人材募集の際、求人広告の賃金欄によく「応相談」と記載しているが、今後は月給が台湾元四万元に達しない業務について「応相談」と記載してしまうと違法となるため、特に注意が必要である。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は、当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修