台湾法上の製造物責任

台湾における製造物責任に関する規定は、「民法」及び「消費者保護法」に定められており、日本のような独立した製造物責任法はない。

以下は、「民法」及び「消費者保護法」における製造物責任に関する主な関連条文である。

1、民法第191条の1

(第1項)商品製造者がその商品を通常使用あるいは消費した他人に損害を与えた場合には、賠償責任を負う。但し、その商品の生産・製造あるいは加工・設計に欠陥がないとき、あるいはその損害が当該欠陥によるものではないとき、あるいは損害の発生防止に相当の注意がはらわれていたときは、この限りではない。

(第2項)商品製造者とは、商品の生産・製造・加工業者である。商品上の標章その他文字・符号により、生産・製造・加工したとみなされるとき、その者を商品製造者とみなす。

(第3項)商品の生産・製造あるいは加工・設計につき、説明書あるいは広告内容と符合しないときも、欠陥とみなす。

(第4項)商品輸入業者は、商品製造者と同一の責任を負う。

2、消費者保護法第7条

(第1項)商品の設計・生産・製造あるいはサービス提供に従事する企業経営者が、商品を市場で流通させたり、サービスを提供したりするときには、当該商品あるいはサービスが、当時の技術あるいは専業水準からみて合理的に期待できる安全性を具えていることを確保しなければならない。

(第2項)商品あるいはサービスに、消費者の生命・身体・健康・財産に危害を及ぼす可能性があるときには、明確な場所に警告表示および緊急処理の方法を明記しなければならない。

(第3項)企業経営者が前二項の規定に違反し、消費者あるいは第三者に損害を与えたときには、連帯賠償責任を負わなければならない。但し企業経営者がその無過失を証明したときには、裁判所はその賠償責任を軽減することができる。

次に、台湾法上、製造物責任の成立には、基本的に下記の三つの要件を同時に満たさなければならない。

  1. 製造物に瑕疵があること。「瑕疵」とは通常、「設計上の瑕疵」(例えば、自動車のエアバッグの設計不良により、交通事故発生時にエアバッグが開かなかった場合)、「製造上の瑕疵」(例えば、メーカーが自動車組み立て時にブレーキシステムを十分に据え付けず、テストしなかったことにより、車両走行時に緊急ブレーキが利かなかった場合)、「指示上の瑕疵」(例えば、定員10人のエレベーターに、業者がエレベーター内に表示や警告を行っていなかったことにより、15人がすし詰め状態で乗った後、エレベーターが荷重に耐えきれずに落下した場合)等を指す。
  2. 消費者が損害を受けていること。
  3. 製造物の瑕疵と消費者の損害との間に因果関係があること。

上記民法および消費者保護法における製造物責任の関連規定によれば、製造物責任を負う者には、実際に製造および加工に従事している者のほか、商品上の商標を保有する者、輸入業者、商品を改変したり、小分けしたりする業者、販売業者なども含まれているため、注意が必要である。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談ください。

【執筆担当弁護士】

弁護士 黒田健二 弁護士 尾上由紀 台湾弁護士 蘇逸修