第3回 台湾の平和を守る徴兵制度
皆さん、こんにちは。黒田日本外国法律事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。
8月に来台して、日差しのあまりの強さにビビってましたが、最近は風がすっかり心地よく感じるようになってきました。休日には、自転車を借りて近くの店まで走り、豆漿と油条を食べたりしてま~す。借りてる自転車は台北市の公共レンタサイクルYouBike(ユーバイク、微笑単車)です!!結構、いろんなとこに貸し出しステーションがあって、台北市内をちょこちょこ移動するには頼りになるんです。運動不足とお感じの方は、ぜひお試しを。
さて、話は変わりますが、今日は台湾の徴兵制について書いてみようと思います。
徴兵制自体、日本人にはなじみが薄いですが、韓国の徴兵制は有名ですよね。芸能人が入隊するときの大騒ぎがニュースになったりします。
台湾にも、韓国と同様に徴兵制が存在するんです。私も来台するまでは知りませんでしたが、兵役法という法律の第1条に、「中華民国の男子は法に基づき、皆、兵役に服する義務がある」と規定されているんですね~。徴兵対象者は年齢で区切られており、満18歳の翌年の1月1日から満36歳の年の12月31日までの期間が徴兵対象年齢(原文では「役齢」)とされています。
この徴兵対象年齢の男子は検査を受け、精神的、肉体的な条件に照らし不適格者が除外された後、原則として徴兵されることになります。現在の徴兵期間は1年間で、給料も出るそうです(過去には、徴兵期間が2年や3年という時代もあったとのこと。厳しいですね~!!)。いくらくらい、給料がもらえるか興味ありますよね??実際に15年前に徴兵されていた人に聞くと、月におよそ6,500台湾元が支給されていたとのことです。
もちろん、徴兵期間中には厳しい訓練があるそうで、5,000メートル走(制限時間内に走り切る必要あり!!)、懸垂、鉄棒登り、ほふく前進(上には鉄の網があって、頭を上げられないそうです)、壁登り(壁は2メートル程度)などが行われていたそうです。
それから、聞くところによると、徴兵中は軍隊から自由に外出できないため、それが原因で別れるカップルもいるとのこと。日本では考えられないですが当人たちにとっては切実な問題ですね。
歴史的には、蒋介石率いる国民党が共産党との主導権争いに敗れて大陸から台湾にやって来て、大陸の共産党とは対立状況がその後も長く続いたため、台湾として一定程度の軍備を備え続けることが重要であったと推測されます。
1990年代には、台湾は世界でも10本の指に入る軍事力を有しておりましたが、最近は、そこまでの軍事力を有していないと思われます。背景としては、中国との関係が改善傾向にあること、台湾政府として軍事予算に振り向けられる金に限りがあることが挙げられるのではないでしょうか。
以前の中台交流は、親戚の訪問がやっと許されるくらいのレベルでしたが、今ではご存知のように、多くの中国人が台湾を個人で訪問することが認められるようになってます。聞くところによれば、台湾を個人旅行で訪問する中国人の数は、今年の1月から9月までで30万人を超えたようです。
このような背景の下、台湾政府は徴兵制から志願兵を募集する制度(募兵制)を推進しており、完全移行は17年1月の予定です。
台湾で生活している私としては、中国と台湾の関係が今後も安定し続けることを切に願うところです!!
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)
京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。