第29回 台湾の外国人労働者
皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。
最近の大きなニュースとして、中国とベトナムが南シナ海で対立している問題がありますね〜。中国が、ベトナムと争いのあるエリアで石油掘削作業を行ったことが発端のようです。中国の海洋進出はいろいろなところで対立の火種となっており、何やらきな臭い雰囲気を感じます。台湾も全く他人事ではなくて、ベトナムでは反中国のデモや襲撃が起きており、台湾資本の工場にも被害が及んでいるようです。
領土、領海などの権益に関し、中国政府が譲歩するということはなかなか考えにくいので、この先も政治対立が続くのは避けられないでしょう。でも、戦争なんてことには絶対になってほしくありませんね〜。
さて、本日は、台湾で私がよく見かけて気になっていた外国人労働者について書いてみます。私の自宅のそばには、小さな公園があるのですが、天気の良い日には、車いすの台湾人のおじいさん、おばあさんと一緒にいる東南アジア系の若い女性を見かけることが多いです。
「えらいよく見かけるけど、なんか資格とかいらんのかな」と思いまして、調べてみたのですが、就業服務法という法律に基づき制定された審査標準があり、一定の看護業務は、年齢が20歳以上で、台湾に入国して業務を行う前に、台湾の中央衛生福利主管機関が認可する外国の健康検査医院か、対象の外国人の本国の労工部門が指定する訓練組織による訓練で合格していればよいと規定されていました。
どの程度、厳しい訓練に合格したのかはわかりませんが、本国で介護関係の資格を有していたり、長期間、介護福祉に従事していた経験までは要求されていないんじゃないですかね〜。
日本では、インドネシアやフィリピンのから経済連携協定に基づく介護福祉士候補生を受け入れていますが、これらの候補生は、日本における介護福祉士の国家試験に合格しないと日本で働き続けられないんですよね。なかなか簡単に合格できるわけではないため、懸命に努力している外国人の姿をニュースなどで見るたびに、「頑張って合格してほしいなぁ」と思ってしまいます。
台湾における現状について同僚に聞くと、台湾で外国人に介護補助業務に従事している人が多いのは、台湾人より安い給与で働かせことができるからであるとのことです。台湾人であれば、月給5万元以上が当たり前なのに対し、外国人は、その半額以下で働いていると聞きました。
このような外国人は、インドネシアやフィリピンの方が多いようです。本国で働くより収入がよいから台湾にやって来るということなのでしょうが、その数はこの何年間で相当増えたと聞きます。
インドネシア系の方はイスラム教を信仰している割合が多いと思われ、昨年の断食(ラマダン)明けに、台北駅に大集合(報道では約3万人にも上っていたそうです)していたのを偶然、私も目撃し、びっくりしたのを記憶しています(日曜日の香港の中環にメイドさん達が集結しているのを思い起こさせる光景でした)。ただでさえ、人が多くて歩きにくい台北駅の床などに大量の外国人が座っていたので、台湾の人々も困っただろうと思います。もっとも台湾の人々は寛容な人が多い気がするので、「1年に1度だし、まあいいかぁ」ってな感じで暖かく見守っていたのかもしれませんね〜。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)
京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。