第33回 台湾の健康保険
皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。
いよいよ4年に1度のサッカーの大イベントであるW杯が始まりましたね!!日本の初戦は残念な結果に終わりましたが、ここからの巻き返しに期待したいものです。W杯は日本でも、2002年の日韓共催のW杯の頃から、国民的イベントになった感じがします。私が最初にW杯を見たのは、メキシコのW杯だと思います。その大会は、マラドーナのための大会と言っても過言ではなく、マラドーナがイングランド相手に5人抜きして決めた伝説のゴールとともに記憶される大会でした。
今回のW杯ではどんなゴールが見られるのか、非常に楽しみです。台湾では、残念ながら、日本ほどサッカーの人気は高くないですね。中国や香港はサッカー人気が高いのとちょっと違いますね〜。
本日は、台湾の健康保険(以下、「全民健康保険」とします)について書いてみます。
皆さんも、海外旅行保険にのみ加入されているという方を除けば、多くの方が「全民健康保険」に加入されているのではないでしょうか。以前の台湾では、「労働者保険」、「公務員保険」、「農民保険」に分けて、保険業者と契約を結んでいたようですが、一部の国民は保険に加入していませんでした。
そこで、台湾政府は、全国民向けの社会保険制度を設けようと考え、1995年から「全民健康保険」制度を始めたのでした。台湾人だけでなく、在留資格証明書類を持っていて、かつ、既に六ヶ月以上に台湾に滞在している外国人又は使用者のある外国人労働者は全民健康保険に加入することができるとされています(全民健康保険法第9条)。「全民健康保険」に加入すると、「健康保険カード」がもらえ、どの病院に行くのにもこのカードがあれば、診察を受けられ、日本のように病院ごとに診察カードを発行してもらうということはありません。いろんな病院に日本で通うと診察カードだらけになっちゃいますけど、台湾ではそういう心配はいらないんですね〜。
私も、「全民健康保険」に加入し、何度か病院に行ったことがありますが、日本人の感覚からすると非常に安い値段で診察してもらえるように思います。
日本では、多くの健康保険組合が財政破綻状態だと聞いていますので、『「全民健康保険」は財政破綻しないのかなぁ』っていう疑問が当然に生じてきますよね。そこで、報道されたニュースなどを見てみますと、確かに2009年の時点では600億元以上の累積赤字があったようですが、第2代の健康保険制度を定め、保険料率の改定を行った結果、現在は800億元以上の黒字状態にあるようです。もちろん、保険料収入の一部を政府が共同負担しているとはいえ、これだけの黒字になるというのは素晴らしいことですよね。
ただし、台湾人の中には、日本と同様に、大した病気でもないのに病院通いしている人もいるようです(病院が地域の社交場と化している??)。このような状況が進めば、「全民健康保険」の財政状況に悪影響を及ぼすのは必至です。加えて、台湾の高齢化と少子化は今後、すごい勢いで進行するようなので、「全民健康保険」制度が財政的に均衡した状態を将来的に保っていけるのか注目していきたいと思います。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)
京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。