第36回 ビンロウのお話
皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。
毎日、暑い日が続きますね。皆さん、お感じになっておられるでしょうが、太陽が照っているときは、日なたにいると耐えがたいような暑さになります。この時期にゴルフをされる方は、本当に一歩間違えると危険ですので気をつけてくださいね〜。もちろん、日常生活を送るだけでも大変ですので、エアコンや扇風機をうまく使って、この暑い時期を乗り切っていきたいものです。
妻から聞いた話ですが、平日の百貨店などは子連れの人が増えているようです。さては、台湾の子どもさんの夏休みが始まったんだろうと思って、同僚に台湾の子どもの夏休みの時期を聞いてみました。すると、台湾では7月1日前後から約2カ月と日本より長い夏休み期間があるとのことです。確かに、台湾の夏は暑く厳しいので、これくらいしっかり休む必要があるのでしょう。
さて、本日はビンロウに関して取り上げてみようと思います(ビンロウは漢字では、「檳榔」と書きます)。ビンロウは椰子科の植物で、この樹の実に石灰をまぜたものが俗にいうビンロウで、元は台湾の原住民の嗜好品でしたが、後に移住してきた漢民族にも広まり、今では台湾全土に煙草と並ぶ嗜好品として普及しているようです。
ビンロウを噛むと、眠気を覚まし、空腹が抑えられる(軽い興奮、酩酊感が得られるという話もあり)とのことで、肉体労働者や長距離を運転するドライバーなどに愛好者が多いと聞きます。確かに台北市内を歩けば、至るところに「檳榔」の看板を見ることができますが、私はまだ実際に購入している人を見かけたことがありませんし、実際に噛んでいる人を見たこともないんです。台北市内で事務作業をしていてオフィスと自宅を往復しているだけだと、なかなかビンロウを噛んでいる人を見かける機会は少ないのかもしれませんね〜。
ビンロウに関係する法規もいくつかあり、「廢棄物清理法」という法律では、ビンロウを噛むことによって出た唾液や噛んだ後に残る繊維質を路上などに吐き捨てることが禁止されています。ビンロウを噛むと、赤や黄色い汁が口の中に溜まるのですが、これらの汁をその辺に吐き出すことは禁止なんですね〜。台湾に長くおられる方から聞くと、昔は街中で赤い唾液が吐かれて汚いのが当たり前だったらしいですが、この法律のお陰でしょう、私が知る限り、街中では赤い唾液を見たことはないです(郊外に行けば、状況は違うかもしれません)。ちなみに、この路上への吐き捨て禁止規定に違反すると、数千元の罰金とともに、4時間の教育講習を受けなければならないとされています。
その他、18歳未満の者はビンロウを噛むことが「児童及び少年の福利・権益保障法」という法律で禁じられています。18歳未満の者が同法に違反してビンロウを噛んだ場合、噛んだ本人や親権者には処罰は与えられず、ビンロウを提供(即ち販売)した者が罰金に処せられるとされています。
台湾において、ビンロウは現在でも一部の人にとっての嗜好品であり続けているようですが、興奮状態になったり、赤い唾液を吐いたりということから、一般的にはあまりイメージがよくないのもまた確かなようです。私が知り合った何人かの台湾人に「ビンロウを噛んだことがあるか」と質問すると、「まさか」ってな感じで、「噛んだことはない」という答えが返ってきました。台湾人の若い人達の間で、ビンロウはあまり「クール」なものではないのでしょう。確かに私も、あえてビンロウを体験したいとは思わないですね〜。
ただ、日本人の方で、どの業界の方か、はっきり覚えていないのですが、現場の台湾人との関係を深めるためにあえてビンロウを噛んでいる人がいると聞いたことがあります。なかなかできることじゃないですよね〜。このような努力をされている方には本当に頭が下がります。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)
京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。