第39回 使用期限切れ肉の販売の問題から

皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。

先週は水曜日に台風が台湾を通過して停班停課になりましたね〜。私が台湾にやってきたのは昨年の8月なんですが、これで2回目の経験です。日本ではよほどのことがない限り、台風でも公共機関はお休みしませんが、台湾では、少しでも台風による被害を抑えようとしてこのような仕組みができたのかもしれませんね。

その一方で、復興航空の飛行機の墜落というニュースを聞いたときには、やはり台風の影響であると思わざるを得ませんでした。台湾全土を停班停課にするような日に、もう少し、リスクを考えてフライトを遅らせる、あるいは中止する判断ができなかったのかと思うと残念でなりません。自然現象はコントロールできないですもんね〜。自然の猛威はおとなしく過ぎ去るのを待つしかないですよね。亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。

さて、本日は、飛行機事故と同様に、先週大きく話題になった米国系中国法人が期限切れ食肉を使用した不祥事の件について取り上げてみます。

報道によりますと、上海福喜食品という会社が使用期限切れの肉を外資系大手ファストフード会社に供給しており、日本のマクドナルドやファミリーマート等も供給先に含まれていたとのことで、日本の消費者も相当に気分が悪い問題ですよね(台湾のマクドナルド等のファストフード会社は供給先に含まれてはいなかったようです)。しかも同社は会社ぐるみで行っていた可能性もあるようです。

正直、「またか」という思いに駆られます。このような食品に関する問題は、中国で多いイメージもありますが、日本でも台湾でも起きています。まじめに食品を製造している会社がほとんどであると信じたいですが、食品会社が現在の競争社会の中で、安価に食品を販売していく必要に迫られる状況が変わるとも思えないため、食品に関する問題が簡単には無くならないのかと思うと悲しい気持ちになります。

台湾に関していえば、大統長基食品廠が食用油の成分を偽り、添加が禁じられている銅クロロフィルなどを混ぜて販売していた事件の裁判が終結し、同社の董事長については詐欺、偽装表示、食品衛生管理法違反などの罪で懲役12年の判決が確定したというニュースがありました。起訴事実を認め、取引先との和解等も進めているとのことで多少の減刑がなされたようですが、台湾の消費者をして「何を信用すればよいのかわからない」という心理にさせた責任は大きいと考えます(この事件以外にもパン達人の問題などもありましたが)。台湾でも「食の安全」は非常に大きな関心事になっていますし、食について関心の高い人は、有機食品の店を利用されていますが、『「有機食品だからって本当に大丈夫なのかな、これも不当表示かも・・・』って疑心暗鬼状態になっちゃいますよね。

今回の上海福喜食品の問題については、同社の工場で、昨年まで品質管理を担当していた従業員が「製造日の改竄」について内部告発したものの、逆に同社により退職に追い込まれ、退職後に訴訟で争ったという内容の報道もありました。現地法人の内部告発が、親会社に届かず、もみ消された結果、問題が大きくなってしまうということは中国に限らず、台湾でも十分にありえることだと思います。皆さまの会社では、内部告発についてどのように処理されていますか?もちろん、適切に処理されていればよいですが、外部通報窓口の設置を検討いただくのも一考の価値があると思います。

この上海福喜食品の問題を他山の石とせず、台湾においても、再度、コンプライアンスについてきちんと考えてみられてはいかがでしょうか。

「私の会社に限って問題はないはず」と思われるかもしれませんが、定期的にコンプライアンスに関する監査、チェックを行われることをお勧めしますよ〜。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。