第43回 「血汗企業」について〜その2
皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。
先日、自宅近くの歩道がライブ会場のようになっていてびっくりしたことがあります。車道は普通に車やバイクがびゅんびゅん走っているのですが、そのすぐ横の歩道に、机といすがセットされ、100人位の人が飲み食いしており、なんとステージまで設けられ、派手な格好をした女性歌手がノリのよい曲を歌っていました。私の自宅近くには、お寺(南福宮)があり、そのお寺の関係者が集まって行う、中元節に関係する行事だと思いますが、歩道のすごい占拠っぷりには笑っちゃいました。台湾人の同僚に聞くと、そこまでの規模で道路を占拠するのは珍しいとは思うけれど、昔からやっているし、数時間だけだから許されているのはでないかとのことでした。
さて、今回も、前回に引き続き「血汗企業」について書いてみます。
「血汗企業」とは、言わば日本のブラック企業に当たり、違法に長時間、労働者を働かせていたり、残業代を適切に支払っていない会社として労働部のホームページ上で公表されるような会社を指して使われていることは紹介しました。
私が見たニュースでは、昨年の7月から1年間、各県、市の労工局が認知した労働基準法違反内容を取材、分析して「血汗企業」ランキングというものを独自に作成しており、上位には、運送会社やスーパーマーケットがランクインしていました。他にも、私が労働基準法違反企業を公表する労働部のホームページを確認したところ、有名な病院や銀行の名前が掲載されていたので、労働基準法に違反する事例は多くの業界に渡っていることがわかります。
そのニュースでは、実際に、どのような労働基準法違反が多かったかも紹介されており、「法に基づいて残業代が支払われていない」「法定の残業時間を超えての残業」「7日ごとに1日の休暇を与えていない」「休日出勤に対して法定の給与が支払われていない」「従業員の出勤記録が備えつけられていない」という例が多かったようです。
政府がどのように、会社の労働基準法違反を認知しているのかですが、同僚に聞くと、「従業員からの告発」や「ランダムな抜き打ち調査」などで違反事例を認知しているようです。
みなさまの会社で、労働基準法違反を起こすことがないように十分にご注意くださいね〜。台湾という人材の流動性が高い場所で、「血汗企業」というイメージが出来上がってしまうと、ただでさえ難しい人材確保が、さらに難しくなってしまうという負のスパイラルに陥ってしまうのではないでしょうか。台湾では、飲食業や冷房下での作業でない、比較的、労働環境が厳しい仕事などで人材の確保が難しいという話をよく聞きます。私が行きつけにしている定食屋さんでも、「なかなかいい人が来ないのよ」というオーナーさんの愚痴を何度か聞かされています。労働環境が厳しい仕事ほど、しっかり労働基準法を守って、労働者のモチベーションを下げさせないようにすることが、負のスパイラルから抜け出す唯一の方法であるように思います。
そうそう、私が空港に向かうときに利用するバス会社も「血汗企業」ランキングに入っていました。バスの運転手さんが過剰労働で事故とか、普通にありえそうな話ですよね??事故だけは、ほんとうに避けてほしいので、運賃を多少は上げてもいいから、運転手さんをたくさん雇用するなど労働環境を整備してもらうようお願いしたいですね〜。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)
京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。