第50回 樹木保護のための法規
皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。
私は台北に住んでおりまして、休日には自転車や徒歩、ジョギングなどで街中をうろうろすることがあります。この間も、ジョギング中に爬虫類ペットショップを見つけ、ショーウインドウ越しに直径50センチはあろうかという立派な甲羅を持つカメさんが動いているのを鑑賞して大興奮しました(ちなみに和平西路沿いです)。その店には、蛇やカメレオン、トカゲからサソリなんかまでいたように思います。私も昔、アメリカザリガニを採ってきて、水槽で飼っていた(放置していた??)ことがありますが、ちょっと蛇やトカゲを飼うのは無理ですね〜(笑)。
私が台北市内をうろうろしていて、「立派だなぁ」「古いものだなぁ」と感心するものとして、日本家屋と大きな樹木があります。日本家屋の多くは遠目から見るしかないのですが、一部、修築してレストランなどになっているものもありますね。樹木については、台湾が高温多湿で樹木の成長に適した環境であり、また、台湾の方が樹木を大事にしているからなのか、大きな樹木を街中で見かけることが少なくありません。
今日は、台北市内における樹木の保護に関して定めた法規を紹介いたします。
法規の名前は「台北市樹木保護自治条例」といいます。本条例は10年以上前に公布、施行され、本条例に基づき、2000本以上の樹木が保護を受けているようです(保護を受けている樹木を、ここで「保護樹木」といいます。保護を受ける条件として、樹木の高さが15メートル以上あるもの、樹齢が50年以上のものなどいくつかの条件があります)。
私の自宅の近くにも保護を受けている立派なガジュマル(中国語では「榕樹」といい、別名ではバニヤンツリーと呼ばれたりもします。樹齢はかなり長く、私はハワイ島でベーブルースが植えたというガジュマルを見たことがあります)があり、樹木番号609番という管理番号が割り当てられています。そして、台北市文化局のサイトでは、保護樹木の樹木番号ごとに情報(住所、高さ、太さ、樹齢など)と写真が掲載されており、上記のガジュマルなどは2005年当時の写真をサイト上で見ることができました。興味のない人には全くどうでもよい話で申し訳ありませんが、私、個人的には、「台北市文化局、なかなかいい仕事してるなぁ」と感心してしまいました。
ちなみに、台北市樹木保護自治条例には、建築業者などの公共工事に関係する者に対して、施工地区内にある保護樹木の保護計画や、移植し再び育てるための計画などの関連資料の提出が義務付けられており、主管機関の審査で同意を得て初めて施工が認められるという徹底ぶりです。本条例を通じて保護樹木を台北市民共通の財産として守っていこうという姿勢が伺われ、大変、素晴らしいと感じました。
ちなみに日本では、国が天然記念物として指定している植物などは税金で保護を受けています(地方自治体が指定した天然記念物も同様であると思われます)。文化庁のホームページによれば、今年の4月1日現在で548の植物が天然記念物として指定されていました。
台湾も暑い夏が終わり、散歩にはもってこいの季節がやってきました。「週末に散歩でもしようかな」という方、よろしければ、目的地や自宅の周辺の保護樹木を探してみられてはいかがでしょうかね〜。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)
京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。