第57回 台湾男性にはイクメンが多い??
皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。
台湾の市長などを選ぶ選挙が終わりましたね〜。結果は皆さん、ご存知の通り、民進党の圧勝で、ここまで一方的な結果には、少し驚きました。また、投票率が70%弱と非常に高いことにもびっくりしました。台湾は中国との距離感の問題など、常日頃、指導者の考え方を意識せざるを得ないこともあるので、政治に関心が高いといえるのでしょうが、日本とは大きな違いがありますね。日本で間もなく行われる衆議院の総選挙は、「なぜ、このタイミングで選挙??」いう疑問もあることからも、低い投票率に終わってしまうかもしれませんね〜。
さて、本日は、育児休暇の取得を勧める労働部の宣伝を見かけたことから、台湾における育児休暇に興味を持ち、取得状況などを調べてみました。
そもそも台湾の育児休暇ですが、根拠は現行の男女雇用平等法にあり、「被用者は、勤続一年(2014年11月21日に立法院で可決された修正案では、勤続期間が6か月になります。)が満了した後、三歳に満たない子女一人につき無給の育児休職を申請することができ、その期間は当該子女が三歳に達するまでとするが、二年を超えてはならない。」とされています。日本では最大で一歳六カ月に達するまでの期間が育児休業の期間ですので日本と比べ、台湾では、かなり子が大きくなるまで育児休職が可能な法律設計になっているといえます。
続いて、育児休暇の取得状況について、まず日本の状況を紹介します。日本では、「イクメン」(育児を頑張っているメンズ?)なる言葉ができてますよね。これは、意図的に社会の注目を集める状況を作り、男性の育児休暇の取得を勧めさせようとしているのかもしれませんが、実際には、日本の労働慣行は簡単には変わっていないようです。私が見たニュースでは、2012年の女性の育児休暇取得率が80%を超えているのに対し、男性の取得率は2%に達していませんでした。さらにいえば、取得した男性の内、8割は1ヶ月以内という限定的な期間での育児休暇の取得であったようです。
これに対して、台湾では、統計が異なるため単純に比較はできないものの、育児休暇を取得した人全体のうち、男性の比率は男性が10数%を占めています(労働部の統計に基づく数字です)。ちなみに昨年のデータですが、年間申請者が男女合わせて6万人強いた中で、男性が約1万人を占めており、日本に比べると相当、高い割合で男性が育児休暇を取得しているといえそうです。
このような結果になったのは、台湾の女性のほとんどが結婚後も仕事をしており、男性も育児へコミットすることが多くの家庭で求められているからではないですかね〜。日本でも、最近、政治主導で女性の社会参加を進めており、結婚後も働く女性が増えていくかもしれません。そうすれば、いずれは、男性の育児休暇取得率が上がっていく可能性はありますね。現在でも、一部の会社は男性に育児休暇を取得するのを相当奨励しているようですが、やはり一会社の取り組みでは限界があると思います。スウェーデンではなんと男性の8割が育児休暇を取得するという話もありますし、こういう問題は政治主導でなんとか糸口を見いだせないものかと思ってしまいます。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)
京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。