第67回 高齢者の自動車運転
皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。
皆さんは旧正月の休暇を楽しまれましたでしょうか?私はと言いますと、日本の実家(広島)に帰省し、友人に会ったり、松江の温泉に行ったりと慌ただしいながらも楽しい時間を過ごせたと思います。ただ、ここぞとばかりに海鮮や肉、お好み焼などを食べてきましたので、当然のように体重が増加しちゃいました。これから少しずつ減らしていかないといけませんね〜。食べ物が美味しい台湾で減量するのはなかなか難しいのですが、頑張ってみようと思います。
さて、本日は、高齢者の自動車の運転についてとりあげてみます。
日本では時々ですが、「高速道路を逆走した」とか「ブレーキとアクセルを踏み間違えた」とかのニュースがあり、一方で生活の足として自動車がなければ病院や買い物にも行きにくいという現状もあるのでしょうから、なかなか難しい問題です。一昨年に亡くなった私の祖父も90歳を超えてからも自動車に乗り続けており、いつも心配していました。もちろん近所への移動だけだったのですが、それでも「車にこすりキズがある」という話を聞くたびに冷や冷やしたものです。
法的には、日本でも台湾でも一般の方が自動車の免許の更新を受けられなくなる上限というのは特に設けられていません。「さすがに85歳とか90歳では運転を禁止してもいいのでは?」という意見も当然あるのでしょうが、一律に○○歳で自動車の運転が禁じられるということにはなっていないんです。
ただタクシー運転手については、日本も台湾でも上限が設けられています。
日本では、法規に明記されているわけではないのですが、運輸局の審査基準として、更新の際に75歳以上となる期間までの更新は認めないということが決められているようです。
一方、台湾では道路交通安全規則という法規においてタクシー運転手を含む職業運転者の年令に関する規定があります。
そもそも、職業運転者は、60歳以降は毎年所定の検査に合格しなければ、免許を更新することができません。さらに65歳を超える職業運転者については、前年度に免許の停止や取消の処分がなく、且つ所定の検査に合格する場合において、小型自動車についてのみ職業免許を更新することができます。そして当該更新は、68歳までとされています。
つまり、台湾では大型トラックを運転して生計を立てていた運転手の場合、60歳〜65歳までは、毎年所定の検査に合格することにより免許を更新することができますが、65歳を超えてからは、トラック運転手の職業免許を得られなくなります。職業としての運転者を継続したくても、小型自動車職業免許、つまりタクシーなどを職業とする免許しか取得できなくなるのです。しかもタクシー運転手も上述したように免許の更新が68歳までですので、日本より7年も早くタクシーを運転できなくなってしまうんですね。
タクシー運転手の方からすれば、「まだまだ運転できるのに一律に運転が禁じられるのはおかしい!!」と言いたくなるのでしょうが、加齢に伴い、反射神経や注意力は少しずつ衰えていく以上、どこかで線引きするのもやむを得ないのかもしれませんね〜。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)
京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。