第91回 司法院の取組(紙の削減)

皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の佐田友です。

最近、よくニュースで聞く言葉として「ドローン」がありますよね。台湾では、「ドローン」のことを「無人機」、「空拍機」、又は「空拍飛行器」などと呼んでいるそうです。少し前に、台北101に「ドローン」をぶつけた中国人のニュースがありましたよね〜。罰金を課せられるとの報道でしたが、人身事故にならなくて本当によかったです。

日本でも、首相官邸や善光寺に「ドローン」が落下したニュースがあり、善光寺に落下したときの、危なく人に当たりそうな映像を見たときにはびっくりしました。こんなものに当たって怪我したら泣くに泣けませんよね。「ドローン」を使った撮影で普段見ることのできない、空を自由に飛び回る鳥しか見ていなかったような角度からの映像を撮影できたりするメリットはあるのでしょうが、危険な物体が身近に登場したともいえそうです。「包丁だって危ないんだから、物は使いようだ」と言ってしまえばそれまでですが、せめて損害発生時には、一定金額を補償する保険に必須で入ることを条件に販売してほしいものですね〜。

私が台北弁護士会に外国法事務律師としての登録をしてから、台北弁護士会発信のお知らせがメールで届くようになりました。そのお知らせの中の一つのトピックに、台湾の最高司法機関である司法院が司法の電子化政策を進めているというものがありました。具体的には、今年の7月1日から台北地方法院の刑事案件について、試験的に事件記録の電子化を進めるというものでした。確かに、刑事にしろ、民事にしろ、裁判における記録は膨大な紙の記録であり、裁判所、弁護士、検察官などがその紙の記録をコピー(謄写)していたりするとすごい量になるのは想像に難くないところだと思います。関連の報道を探すと、真偽のほどは不明ですが、司法院の秘書長の回答によれば、1年にA4の大きさの紙がおおよそ2100万枚ほど、弁護士の謄写によって発生しているとのことです。これだけの紙を作るには、2535本の樹木が必要な計算になるらしく、台北市の大安森林公園の樹木が6000本ほどあるそうなので、その半分弱の樹木を1年に弁護士は切り倒している計算になると報道されていました。

そこで、司法院は来年にも謄写を電子ファイルの受け渡しに変えることで、全面的に紙を無くす方向で実務を変更していきたいと考えているようです。
私も普段から紙を無駄に使いがちでして、もちろん裏紙を使ったりはしていますが(機密情報に関わる印刷物は当然、シュレッダーにかけております)、まだまだ使用する紙を減らす努力が必要でしょう。地球温暖化防止のために二酸化炭素の排出量を減らす必要が世界的に叫ばれている中で、裁判関連の紙を削減する必要があるということはその通りだと思います。

他にも、知的財産法院から、経済部や同部の知的財産局を被告として提起する訴訟(知的財産行政訴訟)について、「オンライン起訴システムが今年の7月20日から正式に採用されているので、どんどん利用してほしい」という趣旨のレターが弁護士会全国連合会に届いており、これも司法院の紙削減取組事例といえるでしょう。オンライン起訴システムというのは、読んで字の如く、紙で起訴状を作成せずとも、インターネットを利用して起訴を行うことができるシステムだと思われます。

日本でも、もちろん紙の利用を減らすための試みが検討されているのでしょうが、私個人の印象としては、台湾の司法当局の方が日本に比べ、柔軟でフットワークが軽い感じがしますね〜。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。