第98回 駐在員の奥様のアルバイト
皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の佐田友です。
恥ずかしながら、3Cという言葉の意味を最近知りました。きっかけは、バスの中に充電用のコンセントがあり、その傍らに「このバスは、3Cの充電用のコンセントを提供しており、使用を歓迎します」との表示があったからです。3Cとは、「computer」「communication」「consumer electronics」を指し、具体的には携帯電話やコンピューター、音楽プレーヤーなどの電子機器がその例として挙げられるんですね~。私の乗ったそのバスでは、「携帯電話などの充電をバスの中でしてくださいね」ってことで、3つのコンセントがバスの前の方の空間に設置されていました。このようなコンセントが設置されているバスは台北市内を走るバスの中にどの程度あるか分かりませんが、私は初めて見ました。乗客にとっては非常にありがたいですよね。私が珍しいと思って、携帯電話で撮影していると他の乗客の方も「これはいいね!!」と私に話し掛けて来られましたもん。日本のバス会社もこんなサービスしてるんですかね~。
雇用主も許可が必要
日本人駐在員の奥様には、活動的な方が多くおられますので、もしかすると小遣い稼ぎと気分転換を兼ねて「台湾で何かアルバイトでもしようかしら」という方もおられるかもしれません。そこで、本日は、台湾の法律上、そのあたりがどのように考えられるか関連法規を紹介してみます。
そもそも台湾において、外国人の就業についての前提となる考えが、就業服務法という法律に規定されています。「国民の仕事をする権利を保障するため、外国人を雇用して働かせる場合に、本国人の就業機会、労働条件、国民の経済発展および社会の安定を妨げてはならない」という規定があり、外国人には台湾人の就業機会を妨げない範囲での就業しか認められていません。そして、雇用主が外国人を台湾で雇用し、従事させることができる仕事が就業服務法に列挙されており、具体的には専門性の高い仕事や学校の教師、スポーツのコーチ、家事手伝いなどの仕事に限定されているんですね~。
さらに同法においては、雇用主が政府機関から許可を得なければ、外国人は台湾の領域内において働くことはできないという規定もあり(永久居留証を取得している外国人などは扱いが異なる)、当該義務に違反した場合、雇用主が処罰されるだけではなく、働いていた外国人についても台湾から出境しなければならないなどの罰則も規定されています。
台湾出境の可能性も
よって、身近なアルバイト、例えば飲食店で注文を聞いたり、料理を出したりというような仕事は、実際に申請しても政府機関から許可をもらえる可能性は低いでしょうから、就業許可を得ずに台湾に居留している外国人(駐在員の奥様のような方です)については、法的には行うことはできないという結論になると考えられます。
1、2回、仕事のお手伝いをして謝礼を受け取る程度であれば、そこまで気にする必要はないと思われる方もおられるかもしれませんが、いったん問題になってしまうと、台湾にいられなくなってしまうという事態に陥る可能性までありますので、就業許可を受けずにアルバイトを行うことはやめておくほうが無難なのではないでしょうか。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)
京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。