第108回 犬肉を食べること
皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の佐田友です。
12月になり、そろそろ忘年会(中国語では「尾牙」)が始まる時期ですね~。私が以前読んだ本の中では、昔の尾牙は、店で店主夫妻が使用人たちにごちそうを振る舞う機会として紹介されていました。ただ、ごちそうの中にある鶏を丸ごと使った料理は、店主が辞めてほしいと考える使用人に鶏の頭を向けて置かれたそうで、その人は、正月を待たずに、黙って荷物をまとめて出て行ったといいます。尾牙はある意味、年末の「恐怖のイベント」でもあったようです。最近は労働基準法もあって、そんなに簡単に解雇はできません(笑)。聞くところによると、最近の「尾牙」では大量のお酒が飲まれ、特に少数派の日本人社員が台湾人社員から集中攻撃を浴び、撃沈するまで飲まされることもあるらしいですね。
その場の盛り上がりで、ついついアルコール度数の高いお酒を飲み干してしまう場合もあるでしょうが、くれぐれも自分の限界を超えないように調整していただきたいものです。時々ニュースにもなりますが、急性アルコール中毒で亡くなられるというような最悪の事態を招きかねません。お酒はほどほどに楽しく飲むのが一番ですので、気をつけてくださいね~!!
高雄市で犬・猫の食用禁止条例可決
最近のニュースで気になったものとして、「犬や猫の食用禁止、高雄市が条例可決」というニュースがあります。以前、「食在広州」(食は広州にあり)として有名な中国の広州で暮らしていた時、北朝鮮の故・金正日(キム・ジョンイル)総書記も訪れたことがあるという「香肉料理」のお店に行ったことを思い出しました。「香肉って何の肉?」って思われるかもしれませんが、犬のお肉です(笑)。はい、すみません。私は犬のお肉をいただいたことがあります。味の記憶はあまり残っていないので、普通においしかったんだと思います。
台湾ではもともと「動物保護法」という法律で、犬や猫を屠殺することは明確に禁じており、違反した場合、「1年以下の懲役に処し、または10万台湾元以上100万元以下の罰金を併科する」という重い処罰も規定されています(日本においても「動物の愛護および管理に関する法律」において禁じられています)。
台湾は犬肉の輸入禁止
ちなみに日本では、犬肉の輸入は特に禁じられていません(新大久保辺りでは普通に食べることができるようです)が、台湾は犬肉の輸入を認めていませんし、上述の動物保護法にて犬の死体の販売も禁じていますので、台湾では「犬肉を食べること」について、基本的に禁止するスタンスであるといえそうです。
もっとも、台湾の法律では「犬肉を食する」ことまでは禁じられていなかったので、例えば、飼っていた犬が死んだ場合や、車にはねられて犬が死んだというような場合に、その肉を食べること自体は違法ではないと考えられます。高雄市としてはこのような合法的に犬肉を食べる行為自体を禁止したかったようです。
法律で縛るべきか?
「犬のような愛すべき動物を食べるなんて野蛮な行為はやめるべき」という考え方の人も当然おられるでしょう。「食」に対してどのようなスタンスを採るか、さまざまな考え方ができるのでしょうが、法規で何らかの物を食べることまで制限するべきなのでしょうか。「タブー」についての研究は学問の一分野になっているくらいで、議論しても簡単に結論が出るような問題ではないでしょう。ただ、私は、「人が自身の幸福を追求することは基本的に尊重されてしかるべき」という理由で、個人が何を食べるかについて、他人に迷惑をかけない限りは尊重してもよいのではないかなと思っちゃいます。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)
京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。