第109回 景品関連の法規改正
皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の佐田友です。
年末近く、この時期になると思い出すのが、日本の終電の「激混み」状態です。忘年会でお酒を飲んで楽しんだ代償ではないですが、自宅に帰るための電車のひどい混み方、すごいものがありました。まあ、朝のラッシュ時も大概すごいですけど。これに比べると台北市内の台北都市交通システム(MRT)の混雑具合は「かわいい」もんですよね。もちろん、台北のMRTでも休日含め、多くの人で混雑している時間帯はあり、忠孝新生駅などではホームに結構な人数が行列をつくり電車を待っていることもあります。ただ、台北ではまだ乗り込むスペースがあるのに、乗るのをあきらめて次の電車を待つという方が結構おられるように見受けられます。ぎゅうぎゅう詰めで移動するくらいなら、次の電車を待つというのが台湾スタイルなんですかね~。私の妻などは、「まだ乗れるじゃない」とぷりぷり怒っていますけど(笑)
不当な景品による取引機会の獲得禁止
企業などが商品の販売促進のために、景品を使ったキャンペーンなどを行うことは、マーケティングの一手法として広く認知されていると思います。公正取引法(中文では「公平交易法」)の今年の改正で、景品などに関する条項が制定されているので取り上げてみたいと思います。
改正でできた条文は、具体的には、「事業者は不当に景品、賞品を提供することにより、取引の機会を得ようと争ってはならない」という規定と、それに続く「前項における景品、賞品の範囲、不当提供に該当する金額およびその他の関連事項に関する規則は、主管機関が定める」という規定となります。もともと公正取引法においては、「低価格誘引またはその他不当な方法により、競争者による競争への参与または従事を妨害する行為」を行ってはならないという包括的な規定で規律されていましたが、明確性を高める狙いがあったものと推測いたします。
上述の「主管機関が定める」ところの具体的な規則である「事業者が提供する景品、賞品に関する弁法」(中文では「事業提供贈品贈獎額度弁法」)という法規も新たに規定されました。ただ、この規定は、以前から存在した処理原則を立法化したものにすぎないようで、処理原則に存在していた景品などの上限の規定が、そのまま同弁法に規定されています。
日本より高額の景品提供可能
具体的な上限はどの程度かと申しますと、100台湾元以下の商品を販売する場合、「景品」(中文は「贈品」)については50元、100元を超える場合には、その商品価値の2分の1がそれぞれの上限とされています。ちなみに、日本では「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」という告示において、1,000円未満の商品では200円、1,000円以上の商品では10分の2を上限とすると規定されています。台湾は、日本と比べ、非常に高額の景品を提供することが可能であることが分かります。
上記弁法では「賞品」(中文は「贈獎」)についての制限も規定されています。「賞品」とは、抽選などを通じ当選者に無償で与えられる賞金または市場価値のある商品などを指します。台湾では賞品総額の上限は、前会計年度の販売金額に応じて規定され、例えば、前会計年度の販売総額が7億5,000万台湾元以下の場合、上限が1億5,000万元というように規定されています。
ここ数年、日本でも、豪華な景品が当たる懸賞もあるようですが、私個人を振り返るとそれほど懸賞に当たったことはありません。ただ、今でも覚えていますが、一度、航空会社さんのキャンペーンで、羽田〜那覇間の往復チケットが当たったことがあります。もう15年以上前の話ですので、「そろそろ次のラッキーが来ないかなぁ~」なんて思っています(笑)
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)
京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。