第39回 不動産仲介の法的責任

台北高等行政裁判所は、2013年12月12日付で作成した13年度訴字第1373号判決において、不動産仲介業管理条例(以下「本条例」という)第4条第4項にある不動産の「仲介業」とは、本条例の規定に基づき仲介または代理販売業務を経営する会社または商店を指し、仲介業ではないにもかかわらず仲介または代理販売業務を行う場合、主管機関は本条例の第32条の規定に基づき処罰を与えるものとする、と指摘した。

本件の概要は次の通りである。

甲は、賃貸人を募集する旨と自身の連絡先を記載した複数枚の不動産広告を台北市の某所に張り出したとして通報された。

新北市地政局は、甲が不動産仲介業の経営許可を取得せずに仲介業務を行っており、本条例第5条第1項および第7条第1項の規定に違反しているため、本条例第32条の規定に基づき、甲に対し10万台湾元の罰金を科すとの決定を下した。

甲はこれを不服とし、自身は居住するコミュニティーの総幹事であり、物件の賃貸広告の張り出しは、住民の委託を受けたことによるもので、何らかの報酬を受け取ったわけではないため、本条例の「不動産仲介業務」に該当しない、と主張し、同局を被告として不服申し立ておよび行政訴訟を提起した。

有償か否かは無関係

裁判所は審理の結果、次のように判断した。

本条例第4条5項によれば、いわゆる「仲介業務」とは、不動産の売買、交換、賃貸の仲立ちまたは代理を行う業務を指す。また「仲立ち」とは、二者の当事者間に介在してその二者のために契約を報告または媒介する行為を指し、有償であるか否かについては、必ずしも行為の本質に影響しない。

従って、仲立ちは仲介業務の行為の1つに該当する以上、報酬の有無を問わず、本条例に拘束されるものとする。本件の広告数点は、いずれも連絡先として甲の携帯電話番号を記載しており、不特定の人が甲の広告を見て、当該物件の賃借を希望する場合は、甲を介して家主に賃貸希望者の意向を伝達することとなり、このような行為は、明らかに家主と不特定の人の間で契約の機会を報告するという仲立ち行為に該当している。

また、甲が掲載した広告は4件もあるため、同じ性質の事務を反復して実施する行為に該当し、経営業務の行為を有していると考えられる。よって、裁判所は、甲の行為は本条例の「仲介業務」に該当するとした。

その上で、不動産仲介業の営業許可を取得していないため、当然のことながら本条例第32条(注)に基づき処罰を与えるべきであると判断し、甲に敗訴の判決を下した。

台湾法において、不動産の仲介行為については厳格な規定があるため特に注意いただきたい。

(注)仲介業ではないにもかかわらず仲介または代理販売業務を経営する場合、主管機関はその営業を禁止しなければならず、会社責任者、商店責任者または行為者に対し10万元以上30万元以下の罰金を科す。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。