第45回 アップルはなぜ罰金2千万元を科されたのか

2013年12月、公平取引委員会(以下「公平会」)は、米アップルの子会社、蘋果亜洲股份有限公司(以下「蘋果亜洲」)が、中華電信、台湾大哥大(タイワン・モバイル)、遠伝電信(ファーイーストーン・テレコミュニケーションズ)の3社の通信業者によるiPhone携帯電話の販売価格を不当に制限しており、公平取引法(以下「公平法」)第18条に違反しているという理由で、蘋果亜洲に対し2,000万台湾元という厳罰を科した。台湾は、全世界で初めてアップルによる携帯電話の再販売価格の制限行為に対して処罰を与えた。

代理販売でなく「再販売」

公平法第18条には、「事業者は、その取引の相手方が、供給する商品につき第三者に再販売、または第三者が再転売する場合、その者が価格を自由に決定することを認めるべきであり、これに相反する約定があった場合、その約定は無効とする」と規定されている。違反した場合は、同法の第41条の規定に基づき、期限を定めて是正させ、罰金などの処罰を受ける。

公平会によって蘋果亜洲が公平法第18条に違反していると判決された理由は、公平会が蘋果亜洲と通信業者の契約書および電子メールなどを調査した際、以下の事実を掌握したからである。

1)各通信業者と蘋果亜洲との取引モデルは、代理販売ではなく、買い取り式による取引であった。つまり、通信業者は蘋果亜洲に発注し、代金を支払った後、iPhoneの所有権を獲得し、かつ保管および順調に販売を行えるか否かというリスクを自ら負っていた。

2)上記にもかかわらず、蘋果亜洲は、iPhone携帯の料金プランについて、つまりユーザーの毎月の電話通信料の高低に相応するiPhoneの価格について、通信業者が事前に蘋果亜洲に報告しなければならず、蘋果亜洲の同意を得なければ販売することができないと規定していた。

3)蘋果亜洲はさらに、一般消費者がiPhoneを購入する際の補助金(旧モデルのiPhoneも含む)についても、事前に蘋果亜洲の同意を得なければならないと通信業者に要求していた。例えば、蘋果亜洲がiPhone5を発表した時、一般消費者はより安い価格でiPhone4を購入できると期待するだろうが、蘋果亜洲による制限規定のため、通信業者はiPhone4の値下げができない。

また、蘋果亜洲はさらに各通信業者に対し、最低購入数量および全ての販売促進広告について当該会社の事前の同意を得なければならないなどの多くの制限を設けていた。

多国籍企業は優勢なブランドおよび商品を有するため、通常、台湾地区の販売業者に対してかなり有利な販売条件を設定できるが、反対に、公平取引法に触れることにより当局によって調査される可能性もあるため、台湾において商品を販売する外国籍企業は特にご留意いただきたい。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。