第58回 独立董事と審計委員会

台湾において、株式を公開発行する会社、即ち公開発行会社は、会社法のほか証券取引法の適用も受ける。証券取引法では、会社法上の会社組織とは別に、独立董事(社外取締役)及び審計委員会の二つの制度が規定されている。

1.独立董事
証券取引法第14の2条第1項は、以下の通り規定している。

本法により株券を発行している会社は、定款によって独立董事を設置することができる。ただし、主管機関は会社の規模、株主の構成、業務の性質及びその他必要な事情に応じて、独立董事の設置を会社に要求する。会社に独立董事の設置を要求する場合、その人数は2名を下回ってはならず、且つ董事の人数の5分の1を下回ってはならない。

独立董事とは、一定の専門知識を持っており、且つ持株及び兼職も制限されており、職務を遂行する際に独立性を確保できる董事である(証券取引法第14の2条第2項参照)。

専門知識を持っているとは、例えば会計士、弁護士等の専門資格を持っており、且つ5年以上の職務経験があることを指す(公開発行会社独立董事の設置及び遵守事項規則第2条参照)。

独立性を確保できるとは、公開発行会社独立董事の設置及び遵守事項規則第3条に規定されているが、具体的には、独立董事に就任する前の2年間及び就任中、以下に掲げる事項のない場合等を指す。

  1. 就任会社及びその関連企業の被雇用者である場合
  2. 本人、その配偶者、未成年の子又は他人の名義をもって会社の発行済株式総数の100分の1以上の株式を保有していること、またはそれらの者の持株が上位10位の自然人株主である場合
  3. 直接に会社の発行済株式総数の100分の5を保有している法人株主の董事(理事)、監査人(監事)、経理人若しくは持株100分の5以上の株主である場合

また、公開発行会社の独立董事が他の公開発行会社の独立董事を兼任する場合、3社を上回ってはならないとされている(公開発行会社独立董事の設置及び遵守事項規則第4条参照)。

さらに、本法により独立董事を設置する会社において、常務董事を設置する場合、常務董事のうち独立董事は1名を下回ってはならず、且つ常務董事の人数の5分の1を下回ってはならないとされている(公開発行会社独立董事の設置及び遵守事項規則第8条参照)。

2.審計委員会
公開発行会社の監察機関として、監察人の選任又は審計委員会の設置を選択することができるが、主管機関は会社の規模、株主の構成、業務の性質及びその他必要な事情に応じて、監察人の代わりに審計委員会の設置を会社に命じることができる(証券取引法第14の4条第1項参照)。

審計委員会は、独立董事全員により構成されるものとし、人数は3名を下回ってはならず、またその1名は招集者であり、且つ、そのうち少なくとも1名は会計又は財務の専門知識を持たなければならないとされている(証券取引法第14の4条第2項参照)。また、会社が審計委員会を設置する場合、本法、会社法及びその他の法律における監察人に対する規定は、審計委員会について準用される(証券取引法第14の4条第3項参照)。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 尾上 由紀

早稲田大学法学部卒業。2007年黒田法律事務所に入所後、企業買収、資本・業務提携に関する業務、海外取引に関する業務、労務等の一般企業法務を中心として、幅広い案件を手掛ける。主な取扱案件には、海外メーカーによる日本メーカーの買収案件、日本の情報通信会社による海外の情報通信会社への投資案件、国内企業の買収案件等がある。台湾案件についても多くの実務経験を持ち、日本企業と台湾企業間の買収、資本・業務提携等の案件で、日本企業のアドバイザー、代理人として携わった。クライアントへ最良のサービスを提供するため、これらの業務だけでなく他の分野の業務にも積極的に取り組むべく、日々研鑽を積んでいる。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。