第157回 会社の最低資本金額について
台湾の会社法第2条によれば、「会社」とは以下の4つの形態を指す。
- 合名会社(無限公司):無限責任社員のみが出資する会社
- 合資会社(両合公司):無限責任社員と有限責任社員が出資する会社
- 有限会社(有限公司):有限責任社員のみが出資する会社
- 株式会社(股份有限公司):出資者である株主に対し株式を発行する会社。株主は保有株式の範囲で有限責任を負う
以前の会社法によれば、上記のうち有限会社と株式会社は、一定の最低資本金に達しなければ設立することはできないとされていた。しかし、会社設立時に実際に必要となる資本金を超える額の最低資本金額の拠出が法律で強制されると、会社の設立を遅らせ、資本金を無駄にすることになりかねず、さらに、最低資本金額の規定があっても、資本の額に相当する財産が現実に会社に保有されているとは限らない。そのため、現在では、有限会社と株式会社の最低資本金額の規制は廃止されている。
なお、もともと合名会社および合資会社については最低資本金額の規制はないが、出資者が無限責任を負うことから、そもそもこれらの会社が設立されることはほぼない。
ここで注意しなければならないのは、最低資本金額の制限が撤廃されたのは会社法においてということである。言い換えれば、他の法律との関係では、事実上、資本金額の制限が存在しているケースもある。
具体的には、業種(運送業、土木建設業、リース業など)によっては、当該業種を規律する特別法などで最低資本金が定められている。また、一般的な業種であっても、役員、従業員などのビザを取得するためには、種類および数に応じて、一定金額以上の資本金が必要となる。
そのため、台湾で会社を設立する際には、最低資本金額の制限が撤廃されているからといって、資本金額を随意に定めるのではなく、自己の業種や必要なビザの種類および数を考慮し、慎重に決定する必要がある。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
早稲田大学法学部卒業。2007年黒田法律事務所に入所後、企業買収、資本・業務提携に関する業務、海外取引に関する業務、労務等の一般企業法務を中心として、幅広い案件を手掛ける。主な取扱案件には、海外メーカーによる日本メーカーの買収案件、日本の情報通信会社による海外の情報通信会社への投資案件、国内企業の買収案件等がある。台湾案件についても多くの実務経験を持ち、日本企業と台湾企業間の買収、資本・業務提携等の案件で、日本企業のアドバイザー、代理人として携わった。クライアントへ最良のサービスを提供するため、これらの業務だけでなく他の分野の業務にも積極的に取り組むべく、日々研鑽を積んでいる。
本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。