第164回 公正取引法における「欺罔または公正さに欠ける行為」

公平交易委員会(公平会、公正取引委に相当)は2016年9月14日、コンビニエンスストア「全家便利商店股份有限公司(ファミリーマート、以下「全家公司」という)」に対し、同社の行為が公正取引法第25条の「欺罔(ぎもう)または明らかに公正さに欠ける行為」を構成しているとして、300万台湾元の過料を科し、さら2カ月以内に是正することを要求した。

本件の発生は、公平会がフランチャイズ加盟店から次のように告発を受けたことによる。

全家公司はフランチャイズ加盟店に対し、その発注規定を順守し、販売量が仕入量の一定割合を超えてはならないことを要求していた。フランチャイズ加盟店が発注規定に違反し、または販売量が仕入量の一定割合を超えた場合、全家公司から警告などの処分を受けるとしていた。ところが、全家公司はフランチャイズ加盟店に対し、事前に発注規定などを十分に開示していなかったのである。

情報開示が不十分

公平会は調査の結果、告発内容は真実であると判断し、次のように指摘した。

全家公司のフランチャイズ加盟店に対する発注規定、販売量と仕入量の割合などの制限は、出資者のフランチャイズシステムへの投入コスト、利益およびリスクと密接な関係にあり、出資者が加盟を検討する際の重要事項に該当する。しかし、出資者の加盟前に、全家公司は上述の発注規定などについて書面で十分かつ完全な開示を行っていなかった。そのため公正取引法第25条(本法において別途規定されるもの以外に、事業者は取引秩序に影響を及ぼすに足るその他の欺罔または明らかに公正さに欠ける行為もなしてはならない)に対する違法行為に該当している。

台湾においてレストラン、服飾などのフランチャイズチェーン事業を経営する日本企業は多く、本件の全家公司と同様な違反をしやすいため、特に注意が必要である。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。