第176回 建物賃貸借制度について

2017年1月1日から実施された新たな建物賃貸借制度では、賃借人に対する保障が強化された。

最高で罰金30万元

賃貸人と賃借人が締結する建物賃貸借契約書の内容は、同日より、内政部が制定した「建物賃貸借契約の約款に記載しなければならない事項および記載してはならない事項(以下『本事項』という)」の規定に合致することとなった。家主が違反した場合、消費者保護法第56条の1の規定に基づき最高で30万台湾元の罰金に処される。

本事項の主旨は、賃借人の利益を保障するため、建物賃貸借契約に記載すべき、または記載すべきでない事項を明確に規定することにある。主な内容には以下の項目が含まれる。

  1. 保証金の額は賃料2カ月分を超えてはならない
  2. 契約には賃貸借期間における水道光熱費、および賃貸借契約により発生する関連公租公課の負担方法を明記しなければならない
  3. 契約には建物返還時の明け渡し手続き、および建物を返還しない場合の違約金額の計算方法を記載しなければならない
  4. 賃貸借の双方が賃貸借契約を解約できる事由を明記しなければならない
  5. 「賃借人は税金申告時に家賃を申告してはならない」と約定してはならない
  6. 「賃借人は戸籍の転入をしてはならない」と約定してはならない
  7. 「賃貸人が負担しなければならない税金が、賃貸する前よりも増加した場合、その増加分は賃借人が負担する」と約定してはならない

契約の修正要求可能

台湾の日本企業のオフィスはほとんどが賃借したものなので、速やかに現在の賃貸借契約の内容を自らまたは法律の専門家に依頼して確認することをお勧めする。本事項に合致しない内容がある場合は、契約の修正を家主に要求することができる。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 蘇 逸修

国立台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、台湾法務部調査局へ入局。数年間にわたり、尾行、捜索などの危険な犯罪調査の任務を経て台湾の 板橋地方検察庁において検察官の職を務める。犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などで検事としての業務経験を積む。専門知識の提供だけではなく、情熱や サービス精神を備え顧客の立場になって考えることのできる弁護士を目指している。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。