第236回 新版コーポレートガバナンスロードマップ

金融監督管理委員会(金管会)が今年3月末に今後3年間におけるコーポレートガバナンスロードマップ(2018〜20年)を公表した。そこで、台湾において上場会社、店頭登録会社(中国語・上櫃)、店頭登録準備会社(興櫃)に出資する日本企業が注意すべき点について、以下の通り整理した。

1. 上場会社・店頭登録会社は監査委員会を設置すること

全ての上場会社・店頭登録会社は、現任の取締役、監査役の任期満了時から監査役の代わりに監査委員会を設置すること。ただし、上場会社・店頭登録会社の現任の取締役、監査役の任期が19年までに満了する場合、その選任する取締役、監査役の任期満了時から適用できる(つまり、上場会社・店頭登録会社は監査委員会の設置を22年までに全面的に完了しなければならない)

2. 店頭登録準備会社は社外取締役を設置すること

全ての店頭登録準備会社は、現任の取締役、監査役の任期満了時から社外取締役を設置すること。ただし、店頭登録準備会社の現任の取締役、監査役の任期が19年までに満了する場合、その選任する取締役、監査役の任期満了時から適用できる(つまり、店頭登録準備会社は社外取締役の設置を22年までに全面的に完了しなければならない)

3. 上場会社・店頭登録会社はコーポレートガバナンススタッフを設置すること

19年より、金融業の上場会社・店頭登録会社、および払込資本額が100億台湾元(約370億円)に達している上場会社・店頭登録会社は、取締役に対する支援の強化としてコーポレートガバナンススタッフを設置すること

4. 上場会社・店頭登録会社は取締役・監査役責任保険に加入すること

19年より、全ての上場会社・店頭登録会社は、取締役・監査役責任保険に加入すること

5. 英語による情報開示率を向上させること

19年より、外資の持ち株比率が30%に達している、または払込資本額が100億元に達している上場会社・店頭登録会社は、英語版の「年度財務報告書」、「年報」、「株主総会議事ハンドブック」を作成すること

上記を総括すると、台湾において上場会社・店頭登録会社に出資する日本企業は、間もなく行われる19年の変革に対応するため、早急に監査委員会の設置、取締役・監査役責任保険への加入、英語版財務諸表の実施等を検討しなければならない。

なお、弊所の弁護士は、日本企業が買収した台湾の上場企業の監査役を務めているため、今回の新版コーポレートガバナンスロードマップに特に注目している。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。