第242回 仮想通貨取引に対する台湾当局の監督管理

ブロックチェーン技術の普及に伴い、さまざまな仮想通貨が頻繁に取引されるようになっています。台湾には現時点で仮想通貨の取引所はありませんが、取引を代理するプラットホーム業者が何社も存在しています。

2018年5月末、法務部、経済部、中央銀行、および金融監督管理委員会(金管会)は、資金洗浄防止・規制法第5条第3項第5号の規定により、仮想通貨取引の関連業者を「業務の特性または取引形態から資金洗浄による犯罪に利用されやすいその他の事業者または従業者」と見なし、同法の枠組みに組み入れて管理していくとの認識で一致しました。

上記の監督管理対象に組み入れられた場合、仮想通貨取引業者は銀行などの金融業者のように、少なくとも以下の措置を講じるとともに、主管機関による定期的な調査を受け入れなければならなくなりました。

銀行同様の取り決め

1)顧客の身分確認手続きを実施の上、顧客の身分確認手続きにより取得した資料を保存しなければならない。顧客の身分確認手続きにおいてはリスクが伴うことを踏まえるものとし、さらに実質的な受益者の審査も含めなければならない。

2)業務遂行に伴い行った国内外取引については、必要な取引記録を少なくとも5年間保存しなければならない。

3)一定の金額以上の取引については、法務部調査局に届け出なければならない(現在、銀行は50万台湾元を超える取引は届け出る必要がある)。

4)資金洗浄防止・規制法に定義される「資金洗浄」行為を犯していることが疑われる取引については、法務部調査局に届け出る義務がある。

以上より、将来、台湾で仮想通貨の取引事業を行う場合、法規制等の順守に対する要求はかなり高くなることが予想されます。これは世界各国における仮想通貨取引に対する監督管理の趨勢でもあるため、台湾で仮想通貨を取引するにせよ、仮想通貨取引事業を行うにせよ、台湾の関連法規をはっきりと把握しておくべきであり、または現地の弁護士に相談すべきです。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

台湾弁護士 鄭惟駿

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

本記事は、ワイズコンサルティング(威志企管顧問(股)公司)のWEBページ向けに寄稿した連載記事です。