オムニバス法に従ったインドネシア労働法規の改正に関するFAQ
雇用創出に関する2020年法律第11号(「オムニバス法」)に従った労働法規の改正に関してよくある質問(FAQ)を以下に記載いたしました。
1.オムニバス法により改正されたのはどのような雇用関連の法的枠組みですか?
オムニバス法は、雇用セクターにおいて、下記の4(四)つの法律を改正しました。
(i) 労働に関する2003年法律第13号(「改正法13/2003」)
(ii) 国家社会保障制度に関する2004年法律第40号
(iii) 社会保障機関に関する2011年法律第24号
(iv) インドネシア人移住労働者の保護に関する2017年法律第18号
インドネシア政府は、上記改正に続き、以下に記載するいくつかの実施細則を最終的に発効しました。
(i) 外国人労働者の活用に関する2021年政府規則(「GR」)第34号(「GR 34/2021」)
(ii) 有期雇用契約、業務委託、労働時間及び休息時間並びに解雇に関する2021年GR第35号(「GR 35/2021」)
(iii) 賃金に関する2021年GR第36号(「GR 36/2021」)
(iv) 失業保障プログラムに関する2021年GR第37号(「GR 37/2021」)
2.インドネシア法により認められる雇用形態に何か変更はありますか?
改正法13/2003の下でも、雇用形態には概ね変更がありません。現行のインドネシア法では、基礎となる契約に基づいた下記の2(二)種類の雇用形態が認められています。
(i) 正社員(Perjanjian Kerja Waktu Tidak Tertentu、「PKWTT」)
(ii) 有期契約社員(Perjanjian Kerja Waktu Tertentu、「PKWT」)
3.PKWTに関する規定はどのような内容ですか?PKWTに関して雇用主が遵守すべき制限は何かありますか?
改正法13/2003では、下記に基づきPKWTが分類されています。
(i) 雇用期間
(ii) 業務の完了(改正法13/2003第56条(2))
また、PKWTは、GR 35/2021によりさらに以下のとおり分類されています。
No. |
PKWTの形態 |
要件及び制限 |
1 |
期間に基づくPKWT |
• 業務範囲: • 契約期間: 延長分を含め最長5(五)年(GR 35/2021第8条(2)) |
2 |
業務の完了に基づくPKWT |
• 業務範囲: 1回で完了する業務、一時的業務に限定 • 契約期間: PKWTに明記されているとおり。ただし、必要とみなす場合には、延長を認める(GR 35/2021第9条(1)及び(4))。 |
3 |
日雇い労働者に関するPKWT |
• 業務範囲: 期間及び業務量が変化し続けるため、労働者の作業参加に基づき支払が行なわれる業務に限定(GR 35/2021第10条(1))。 • 契約期間: ひと月あたり20日が上限。労働者が連続する3か月間、20日を超えて作業した場合、当該労働者は正社員とみなされなければならない(GR 35/2021第10条(4))。 |
さらに、雇用主には、下記期間内に地方雇用局(Dinas Ketenagakerjaan)にPKWTを登録する義務があります(GR 35/2021第14条(1)及び(2))。
(i) オンライン登録の場合、署名日から3(三)日以内
(ii) 書面提出による登録の場合、署名日から7(七)日以内
4.外国人労働者の活用に関する規定はどのような内容ですか?
改正法13/2003に基づく外国人労働者の活用に関する規定は、以前制定された規則、具体的には下記の規則と合致しています。
(i) 外国人労働者活用手順に関する2018年大統領規則第20号
(ii) 外国人労働者活用指針に関する2018年労働大臣規則第10号
現行法により、雇用主は、外国人労働者活用計画(Rencana Penggunaan Tenaga Kerja Asing、「RPTKA」)について中央政府の承認を取得することが義務付けられていました。改正法13/2003は、改正法13/2003第42条の改正により、当該規定を強調しています。
しかしながら、改正法13/2003は、以下に対するRPTKA義務の適用除外を規定しています(改正法13/2003第42条(3))。
(i) 一定数の株式を所有する取締役又は理事
(ii) 外国の代表である公使館の外交官及び領事館員
(iii) 緊急事態により停止した製造工程、職業プログラム、技術ベースの振興企業、一定期間の業務会合又は研究に必要な外国人労働者
一方、以下に記載するいくつかの規定は、改正法13/2003にも残されています(GR 34/2021第4、9及び11条)。
(i) 外国人労働者は、必ずPKWT契約に基づき雇用しなければならない
(ii) 個人が外国人労働者を雇用することは禁止する
(iii) 外国人労働者は、人事職を務めてはならない
5.労働時間及び残業時間についてはどのように規定されていますか?
労働時間については、概ね従前のとおりです。ただし、特定のセクターは例外とされ、かかるセクターでは、雇用契約、会社規則、又は労働協約(Perjanjian Kerja Bersama、「CLA」)により労働時間について合意することとなります(GR 35/2021第21条(4))。
一方、新しい規定は、残業時間の上限を、一週間あたり14(十四)時間から一週間あたり18(十八)時間に引き上げています(GR 35/2021第26条(1))。
6.従業員の解雇についてはどのように規定されていますか?
オムニバス法は、雇用主に対し、解雇を未然に防ぐためにあらゆる努力を尽くすことを義務付けていますが、解雇が避けられない場合には、解雇の意図及び理由を従業員及び/又は労働組合に伝えなければなりません(改正法13/2003第151条(1))。
従業員が雇用契約の解除を拒絶した場合は、産業関係紛争解決に関する2004年法律第2号に基づいた仕組みに従って解雇を実施する必要があります。
オムニバス法により、解雇手当の算定に関する条項が削除されています。GR 35/2021に従い、解雇手当は、以下から構成されます(改正法13/2003第156条(1))。
(i) 退職金
(ii) 就業期間の認定
(iii) 補償金
解雇条件毎の詳細な算定については、GR 35/2021第40~57条の実施細則により明確に記載されています。
7.業務委託活動についてはどのように規定されていますか?
オムニバス法により、業務委託に関する下記の規定が削除されました。
(i) 業務委託の種類、具体的には委託業務(pemborongan pekerjaan)及び業務サービス提供者(penyedia jasa tenaga kerja)
(ii) 2003年法律第13号により認められていた、業務委託可能な業務の種類。
改正法13/2003で認められたのは、業務委託会社(perusahaan alih daya)を通じた業務委託という一種類のみであり、業務委託される業務に関する制限は一切定められていません(改正法13/2003第66条(1))。
8.改正法13/2003は雇用主にとってどのような意味がありますか?
雇用主は、上記改正を踏まえ、改正法13/2003及びその実施細則を遵守するため、自社の雇用契約・方針、及び会社規則又はCLAを調整する必要があるかもしれません。
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【執筆】
Nusantara Legal Partnership
Marshall Situmorang(パートナー),Audria Putri(シニア アソシエイト),
Aniendita Rahmawati(アソシエイト)