第111回 フィリピン会社法の改正

皆さん、こんにちは。Poblacionです。

フィリピンにおける会社設立を計画している方、又は既に会社を経営している方であれば、2019年2月20日にドゥテルテ大統領が、共和国法第11232号(いわゆるフィリピン改正会社法)に署名したことに関心を持たれるでしょう。この法律は、ほぼ39年前の会社法を、フィリピン国内に限らず海外も含めた現在の取引環境に適合させるべく改定することを意図した、画期的ともいえる法律です。同改正法の最終的な目標は、フィリピン国内における事業運営を円滑化し、さらなる投資を呼び込むことです。

改正会社法は、旧法を様々な点で改善し、証券取引委員会(SEC)が既に実施している特定の慣行を成文化しました。改正会社法において注目すべき変更点の一部を、以下に挙げます。

 

旧会社法

改正会社法

発起人

会社の設立には、5名以上15名以下の自然人が発起人となる必要があり、そのうち過半数はフィリピン居住者でなければならない。

15名以下の自然人、パートナーシップ又は法人により、会社を設立することができる。発起人の過半数をフィリピン居住者にするという要件も撤廃された。

会社存続期間

会社の存続期間は、設立日から最長50年であり、1回につき50年以下の期間で延長が可能である。

会社は、その定款に別途規定しない限り、恒久的に存続することができる。
改正会社法前に設立された会社であっても、その定款に規定された会社存続期間の維持を選択する旨の届出をSECに対して行わない限り、同様に恒久的に存続する。

設立時の株式
引受

授権資本の25%の引受が必要であり、引受資本の25%(5,000ペソを最低額とする)の払込が必要である。

引受資本金及び払込資本金に関する最低額が撤廃された。
当然ながら、改正会社法の規定にかかわらず、特定の会社には、その事業の業界に応じた特定の法律に基づき異なる資本要件が適用されることがある。

取締役の人数

会社には、5名以上15名以下の取締役を置かなければならない。

会社には15名以下の取締役を置かなければならない。

社外取締役

社外取締役に関する規定なし。
ただし、証券規制法等のいくつかの法律により、社外取締役の設置が既に義務付けられている。

公益に資する会社は、社外取締役を置かなければならず、かかる社外取締役は、取締役会の20%を構成しなければならない。該当する会社の例は以下のとおり。

  • 証券規制法に規定された上場会社
  • 銀行及び準銀行、質屋、信託会社及び保険会社、並びにその他金融機関
  • SECが決定する、公益に資する事業を行う会社

取締役及び役員の欠格

6年を超える懲役刑が科される犯罪行為、又は選任日前の5年以内に犯した会社法違反について、確定判決により有罪とされた人は、いずれの会社においても、取締役、受託者又は役員としての資格を有しない。

欠格理由には以下を含むよう拡大された: (i) 犯した時期を問わない会社法違反、(ii) 証券規制法違反、(iii) 詐欺行為がかかわる犯罪における有責、及び(iv) 海外で行われた同様の行為、不正行為又は違反

違反に対する罰則

会社法に違反した場合、裁判所の裁量により、1,000~10,000ペソの罰金及び/又は30日~5年の懲役を科される。

改正会社法により、同法違反に対して制裁を課すSECの行政上の権限が拡大される。SECには、違反者に対して以下の罰則を科す権限が与えられた。

  • 5,000~2,000,000ペソの罰金、及び違反1日につき1,000ペソの罰金(2,000,000ペソを上限とする)
  • 永久差止命令
  • 登録証の停止又は取消
  • 会社の解散

さらに、改正会社法に違反した場合、同法に基づく特定の罰則の対象となることがある。

報告義務

規定なし。

改正会社法では、すべての会社が、年1回、SECに下記文書を提出するよう義務付けられた。

  • 年次財務諸表
  • 年次報告書

さらに、改正会社法によって「一人会社」という新しい種類の法人が導入されました。これは、1名の株主から構成される法人です。この特殊な法人については、別のコラムで論じることにいたしましょう。

上記は、会社法に加えられた数多くの大きな変更のうち、ほんの僅かな例を挙げたに過ぎません。従いまして、フィリピンで既に事業を運営されている場合や、フィリピン国内に会社設立を計画されている場合には、フィリピンのアドバイザー又は弁護士に相談し、今回の新たな変化について助言を求めることをおすすめします。


*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。