第67回 投資優遇措置を利用する企業向け最新情報

皆さん、こんにちは。Poblacionです。今回は、フィリピンでの投資優遇措置についてお話しましょう。

2015年12月、フィリピン大統領が共和国法第10708号に署名しました。「税優遇管理・透明性法(TIMTA)」としても知られるこの法律は、単独の優遇措置データベースを構築することにより、税優遇措置の承認における財務上の説明責任と透明性を推進することを目的としています。こうして政府は、企業に認められた優遇措置の正確な量に関する経験データを得ることにより、過去の収益による経済的影響の監視や分析ができるようになり、優遇措置による社会的恩恵を最大化します。

投資促進機関((IPA)−フィリピン経済特区庁(PEZA)、投資委員会(BOI)及び基地転換開発公社(BCDA]等)に登録されている企業の場合、今後は、内国歳入庁(BIR)の電子申告制度に従って、毎年の所得税申告を電子申告で行うことが義務付けられます。以前は、BIRが決定する「大型納税企業」にだけ、電子申告が義務付けられていました。また、税優遇措置を利用しているIPA登録企業には、納税申告書の提出及び納税の期限から30日以内に税優遇措置に関する年次報告書を提出することが義務付けられました。実施規則(未だ制定されていません)に、税優遇措置に関する報告書の具体的書式及び内容が規定されるでしょうが、報告書にはおおむね、所得を基準とした税優遇措置、付加価値税及び関税の免除、税控除、税還付並びに免税等、当該企業が享受しているものに関する情報を記載することが必要です。年次税情報報告書から得られたデータは、BIRや関税局のような他の政府機関にも伝送されて共有され、財務省(DOF)が維持するデータベースに保管されます。

上記した申告及び報告の義務には、従わなければなりません。ある企業が、 (i) BIRの電子申告制度を利用して税申告を行ったという証拠を示さない場合、又は (ii) 税優遇措置に関する年次報告書を提出しない場合、法に基づき、以下の罰則が適用されることがあります。

•最初の違反 – 100,000ペソ(約250,000円)の罰金
•2回目の違反 – 500,000ペソ(約1,250,000円)の罰金
•3回目の違反 – 登録取消

既存の投資優遇措置についてご心配は不要です。共和国法第10708号は、IPA登録企業が現在享受している優遇措置について、変更や低減を求めるものではありません。実際、同法のいずれの規定もIPAが承認できる優遇措置の額を何らかの形で低減させたり限定したりするものとは解釈されない、と同法にも明文規定されています。法律の意図したところは単に、政府の認めた優遇措置が国の経済に及ぼす影響を見極めるため、その記録を維持することです。よって、この新しい法律によって投資優遇措置が影響を受けることはありませんので、ご安心下さい。


*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。