第76回 株券の再発行
皆さん、こんにちは。Poblacionです。白状しますと、私は物の管理が得意ではありません。もし、私のように、常に物の在り処がわからなくなるような(もっとひどい場合には大切な物をなくすような)人が、もしフィリピン企業の株式を所有していて、その株券に紛失、盗難又は破棄があった場合はどうしたらよいでしょうか。その場合は、残念ながら、ただ単にその会社を訪れ、会社の秘書役に株券の再発行を依頼する、というわけにはいきません。
フィリピンの会社法には、当然ながら、会社が適切に株券を再発行する際の正式な手続が規定されています。
まず、株券の再発行を希望する株主が最初にしなければならないことは、宣誓供述書の作成です。
宣誓供述書には、以下を記載します。
(1)株券が紛失、盗難又は破棄された状況
(2)株券に係る株式数
(3)株券番号
(4)株券の発行会社名
株主は、紛失、盗難又は破棄の事実を証明するのに必要な他の情報や証拠も提出しなければなりません。なお、株券の盗難を証明する警察への届出を、紛失に関する宣誓供述書に添付することができます。
その後、株主は、宣誓供述書のコピーを3部、会社に提出します。会社は、宣誓供述書の内容を会社の帳簿と照合して検証した上で、株主の費用負担により、株券の紛失又は破棄について公告します。公告は、会社の本社所在地において広く流通している新聞に、週1回、3週間連続で掲載します。公告には、以下を記載します。
(1)会社名
(2)株主名
(3)株券番号
(4)当該株券に係る株式数
(5)最終公告日から1年が経過する時点までに、当該株券に関する異議が会社に対して申し立てられていない場合、会社は、紛失、盗難又は破棄された株券を取り消し、旧株券に代わる新株券を発行するという説明
なお、上記(5)の1年間の猶予期間をなしにすることも可能です。その場合、会社は、取締役会が納得する金額及び形式による1年間有効な保証金又は担保金を預託する意思が株主にあることを条件に、株券を即時発行することができます。
株券の再発行に異議のある株主は、そのことを会社に知らせなければなりません。株券の所有権に関する訴訟が裁判所に係属している場合、株券の所有権に関する最終決定が裁判所によって下されるまで、会社には新株券の発行を保留する義務があります。
なお、上記手順に従って会社が株券を再発行する場合、これに対して訴訟を提起することはできません。ただし、会社及びその役員による株券の再発行が、詐欺、悪意又は過失による行為であった場合は、その責任を免れません。
いずれにせよ、株券のみならず、大事なものをなくさないように日頃から注意をすることが大切ですね!
*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。