第81回 高齢者の特権
皆さん、こんにちは。Poblacionです。フィリピンでは、高齢者は、長年自分を犠牲にして一生懸命働いてきた人として、非常に尊敬されています。高齢者が、家族の幸福だけではなく、国の経済にも貢献してきたことを認めるべく、高齢者には法律による数々の給付、免税措置、その他社会福祉支援が与えられており、高齢者はこれらを享受しながら老後を過ごすことができます。
高齢者の福祉と完全な社会参加を全面的に支援するため、拡大高齢者法が2010年に制定されました。同法の恩恵を享受できるのは「高齢者の市民」ですが、その定義は、フィリピン国籍を有する60歳以上のフィリピン国内居住者です(現時点では、フィリピンに居住する外国籍の高齢者は、拡大高齢者法の恩恵を受けることができませんが、外国籍の高齢者がフィリピン国籍の高齢者と同じ恩恵を受けられるように法律を改正しようという動きもあります)。
高齢者が享受できる給付のうち、最も有用で注目すべきものは、高齢者が自分で使用/利用する以下の商品及びサービスの購入について、20%の割引と12%という付加価値税の免除を受けられることです。
・医薬品及び健康省が定める医療用の備品、付属品及び装置等の必需品の購入
・全ての民間病院、医療施設、外来患者診療所及び自宅診療サービスにおける医師の診察料
・民間病院の承認を受け、あるいは自宅診療雇用機関を通じて雇われ、自宅診療サービスを提供する、免許をもつ専門家のサービス料
・全ての民間病院、医療施設、外来患者診療所及び自宅診療サービスにおける医療サービス、歯科治療サービス、診断及び検査料
・公共バス、ジプニー(乗合いバス)、タクシー、AUV(アジアユーティリティビークル)、シャトルサービス及び公共鉄道による陸上輸送の運賃実費
・国内の航空輸送サービス及び海上輸送船舶等の運賃実費
・ホテル等の宿泊施設、レストラン及び娯楽施設のサービス利用料
・劇場、映画館、コンサートホール、サーカス、レジャー用娯楽施設の入場料
・高齢者が死亡した際の葬儀代及び埋葬料
さらに高齢者は、生活必需品及び主要生活用品と特定された商品について、5%の特別割引を受けることができます。生活必需品とは、非常時等に生命を維持するための消費者のニーズに不可欠なものです。これには、米、とうもろこし、パン、鮮魚、魚の干物、魚の缶詰、その他海産物、豚、牛及び鶏の生肉、飲料水等が含まれます。一方、主要生活用品とは、生活必需品とはみなされないが、非常時に消費者が必要とする物のことです。主要生活用品の例は、小麦粉、豚肉、牛肉及び鶏肉の加工品又は缶詰、及び調味料です。
高齢者又はその正当な代理人が上記の恩恵を受けるためには、高齢者という身分を証明するものとして、以下の文書のいずれかを提示しなければなりません。
・当該高齢者の居住地にある高齢者事務局が発行した身分証明書
・当該高齢者の旅券
・当該高齢者が60歳以上のフィリピン国籍保有者であることを証明するその他文書
高齢者に割引を提供するからといって、必ずしもあなたが事業損失を被るということではありませんので、フィリピンで事業運営をされている方も、心配なさらないでください。企業による高齢者への提供が法律上義務付けられている割引は、所得税算定の際、総所得から控除することができます。
ですので、もしあなたがフィリピンで事業をされているなら、必ず、拡大高齢者法に基づく義務を守り、法律によって高齢者に権利が与えられている恩恵を与えるようにしてください。これを怠ると、刑事罰を受けることにもなりかねません。実際、同法の義務に違反したことにより、フィリピンにおいて多くの人や企業がこれまでに訴追されています。特に、高齢者カードを認めることを拒絶したり、高齢者に与えることが義務付けられている恩恵を提供しなかったりした場合、初犯の場合でも、2年から6年の懲役及び50,000ペソから100,000ペソの罰金を科されることが法律に規定されています。再犯の場合は、2年から6年の懲役及び100,000ペソから200,000ペソの罰金が、裁判所によって科される可能性もあります。違反者が企業である場合、直接かかわった役職者(社長、総支配人、マネージングパートナー等)が、その責任を負うことになります。これらの罰則により、法の規定に違反した企業の営業許可やフランチャイズの取消を求める適切な訴えの提起権が損なわれることもありません。
どこの国でも同じですが、高齢者をいたわる事は必要ですよね!
高齢者社会の日本でも同じような法律が制定される日がやってくると良いですね!
*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。