第82回 非株式会社の設立
皆さん、こんにちは。Poblacionです。突然ですが、フィリピンで、慈善事業か慈善団体を立ち上げることをお考えではありませんか?もし、そのようなことを検討されている場合、非株式法人を設立するのも一つの方法でしょう。
非株式会社は、慈善活動、宗教活動、教育事業、専門的事業、文化事業、共済組合、文芸活動、科学事業、社会活動、都市事業等を目的として、設立することができます。通常の株式会社と非株式会社との主な違いは、後者の場合、その収益をメンバー、受託者及び役員の間で配当金として分配できないという点です。非株式会社の得る収益は、常に必要性又は適切性に応じて、会社の設立目的を推進するために使用されなければなりません。
では、どのような方法で非株式会社を設立するのでしょうか?最初に重要なのは、必要な資本金を準備することです。原則として、非株式会社の設立に関して決められた出資額又は資本額の条件はありません。会社の運営を始めるのに適切な合理的金額が準備出来ていれば十分です。ただし、非株式会社が財団として運営される場合には、当該会社の最低資本金額は、1,000,000ペソになります。
通常の会社の場合と同様に、非株式会社にも発起人が必要です。発起人は、5名以上15名以下の法定年齢に達した自然人でなければならず、その過半数はフィリピン居住者でなければなりません。これらの発起人は、以下の文書を作成し署名した上で、設立申請書に添付して証券取引委員会(SEC)に提出する必要があります。
・社名予約票
・通常定款
・付属定款
・社名変更の共同誓約(同一又は類似の名称を使用している事業体がある場合)。本要件は、通常定款に同趣旨の記述がある場合には求められません。
・会社秘書役による証明が付されたメンバーの一覧(通常定款に既に記載されている場合は不要)
・財務役による証明が付された出資者/寄付者及び出資額/寄付額の一覧
・関連する政府機関による承認。たとえば、当該事業体が慈善活動を行なう場合、社会福祉開発省(DSWD)による承認を取得する必要があります。当該事業体が医療サービスを提供する場合には、保健省(DOH)による承認の取得が必要です。
・当該非株式会社が財団として運営される場合には、以下の提出が必要になります。
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- 1,000,000ペソという最低出資額の証拠となる銀行預金の認証付コピー
- SECによる監査の実施を認める同意書。
なお、非株式会社設立の申請料は約1,500ペソであり、SECから設立証明書が発行されるまでには約1ヶ月かかります。
営利目的で運営されるのではなく、専ら宗教活動、慈善活動、科学事業、運動競技、文化事業等の目的のために設立された非株式会社は、原則として、所得税が免除されます。ただし、当該会社の財産のいずれか、又は営利目的で行なわれる活動のいずれかから所得が得られる場合には、その種類や性質を問わず、また、当該所得の処分方法の如何にかかわらず、課税対象となります。さらに、慈善活動、宗教活動、文化事業又は社会福祉活動に従事し、フィリピンNGO認定評議会(PCNC)に登録されている会社に対して行なわれた寄付も、一定の条件を満たしていれば、寄付をした者の税金から免除されます。寄付を受けた会社も、同じく一定の条件を満たしていれば、寄付金分の税額控除を請求することができます。ただし、非株式会社がNGO認定を申請できるのは、営業開始から1年間に限定されることにご留意ください。
非株式会社にも、通常の株式会社と同様に報告義務があります。すなわち、年に一回、一般情報票(GIS)及び監査済み財務諸表をSECに提出することが義務付けられています。尚、財団の場合には、以下の書類についても提出義務があります。
・下記事項を含む社長及び財務役の宣誓陳述書
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- 資金源及び資金額
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- 計画中、継続中及び達成済みのプログラム/活動、並びに当該プロジェクトの責任者のフルネーム、住所及び連絡先番号
- 資金の利用に関する説明
・財団のプログラム及び活動の存在に関して市長、バランガイ長、DSWD相名又はDOH相名(場合に応じる)で発行された証明書
日本での慈善事業も良いですが、フィリピンで行ってみるのも一つの手ですね!
是非ご検討下さい!
*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。