第90回 車運転中のポケモンGO
皆さん、こんにちは。Poblacionです。2016年8月、先行する国々に続き、フィリピンでもポケモンGOが配信開始されました。予想どおり、多くのフィリピン人がポケモンGOに夢中になりました。Facebookの投稿を見ると、私の友人らも例外ではないとすぐ分かりました。友人が捕まえたというポケモンアイテムに関する書き込みや、ポケストップに集まりポケモンアイテムが現われるのを待つフィリピン人の画像が投稿されているのを見ない日はありませんでした。ポケモンGOが発売されるや否や、ポケモンGOのプレイヤーに対し、フィリピン警察や交通輸送管理を監督するその他政府機関から安全上の警告が発行されたのも当然でしょう。
言うまでもなく、フィリピンで車を運転中にポケモンGOで遊んではいけません。安全面の心配があるのはもちろんのこと、法律違反にもなりかねません。2016年7月(ポケモンGOが発売される数週間前です!)に共和国法第10913号、いわゆる「不注意運転禁止法」が、フィリピン政府によって制定されました。この法律の目的は、「破壊的で甚大な被害をもたらす車両事故の影響」から市民を守ることです。多くのフィリピン人は、常に携帯電話に釘付けで、携帯電話でメッセージを送ったり、ネットサーフィンをしたり、ゲームで遊んだりすることが好きですから、この法律とのかかわりは深いです。
法律で禁止される「不注意運転」とは、その定義によれば、運転者が運転中又は赤信号で停車中に車内で以下のいずれかの行為をすることです。
・移動通信機器(スマートフォンを含む携帯電話等)を使用して、テキストメッセージ(iMessageやLineメッセージ等)を書いたり、送ったり、読んだりする行為、又は電話をかけたり、受けたりする行為、及びその他同様の行為。
・電子娯楽/計算機器(ラップトップ、タブレットPC、ビデオゲーム機等)を使用して、ゲームをしたり、映画を見たり、ネットサーフィンをしたり、メッセージを書いたり、電子書籍を読んだり、計算したりする行為、及びその他同様の行為(ただし、GoogleマップやWazeのようなナビアプリの使用が不注意運転にあたるかどうかについて、法律には明文規定がありません)。
運転する車が、公用車であるか私有車であるかは関係がなく、外交上使用される車でも違いはありません。他の形の輸送手段、例えば建設車両や、人や動物が動かす車両(自転車、荷車、馬車等)であっても、公共の主要幹線道路、もしくは一般の通りにおいて、あるいは公共の安全が考慮されるべき状況において、輸送手段の操作や運転がされる場合には、法律の対象になります。
一方、以下の場合は、法律違反とはみなされません。
・運転者が、機器を手で持たなくても電話の発着信ができるハンズフリー機能(イヤホンやスピーカーフォン等)を用いて、移動通信機器を操作する場合(ただし、移動通信機器が、運転者の視界を遮るものであってはなりません)。
・車が動いていない状況で移動通信機器や電子機器を使用する場合。たとえば、車を駐車スペースにきちんと停めて携帯電話でゲームを楽しむ場合。ただし、運転者が赤信号で一時的に停車している場合、又は交通規則に従って車を道路の脇に寄せている場合は、免責の対象にはなりません。
・警察、病院、消防署及びその他同様の機関への電話等、緊急目的で携帯電話を使用する場合。
・救急車、消防車及び緊急救助を行うその他車両等の緊急車両を操作している際に、運転者の任務の過程及び範囲内で携帯電話を使用する場合。
不注意運転をしたと判断された運転者には、初犯の場合はPhp5,000の罰金、二犯目の場合はPhp10,000の罰金、三犯目の場合はPhp15,000の罰金と3ヶ月間の運転免許停止処分が科されます。さらに再犯が続くと、運転者には、Php20,000の罰金と運転免許失効の処分が科されることになります。また、関連する車両が公共機関の車両や商用車であった場合、運転者だけでなく、その運送会社の所有者又は経営者も共同責任を負い、罰金の支払が生じます。
以上のことから、もしフィリピンで車を運転される予定がある場合は、視線は必ず道路に向けて、決して携帯電話を使ったり(ましてや、ポケモンGOで遊んだり)しないでください。そうすれば、法律を遵守できるだけでなく、公共の安全も、そしてあなた自身の安全も、守ることができます。
*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。