第92回 クリスマス・年末ボーナス

皆さん、こんにちは。Poblacionです。クリスマスは、おそらくフィリピンで最も重要な休暇で、皆がその時を待ち望んでいます。カトリック教徒であるフィリピン人にとって、クリスマスにはもちろん宗教上の意義もありますが、それとは別にフィリピン人がクリスマスを大好きな理由は、贈り物のシーズンであるからです。フィリピンの子供達は、両親から、それとも「サンタクロース」から、新しいおもちゃをプレゼントしてもらえるのを待ち焦がれます。その一方でフィリピンの大人達にも、楽しみがあります。雇用者が一般的にクリスマスの時期にくれるクリスマスボーナス、年末ボーナス、臨時ボーナス、その他の給付を楽しみにしているのです。

フィリピンで事業を運営している場合、法律の規定範囲を超えてクリスマスボーナスやその他給付を従業員に与える義務はあるでしょうか?答えは、「場合による」、です。

原則からいうと、雇用者には、従業員にボーナスを支給する義務はありません。ボーナスは、従業員の給与や賃金には含まれませんので、法的に要求したり執行したりできる雇用者の義務ではありません。ボーナスは、雇用者の寛容さから自発的に与えられるものとされており、これを給付するか否かは、雇用者側の裁量のみに委ねられています。

ただし、従業員が雇用者に対してボーナスを要求できる場合が2つあります。

第一に、雇用契約又は労働協約にボーナスに関する規定がある場合、従業員は、雇用者にボーナスの支給を要求することができます。従いまして、雇用契約に「給与2ヶ月分のクリスマスボーナス(もしくは年末ボーナス、又は会社の達成した収益率に応じた臨時ボーナス)の給付を受ける権利が従業員にはある」と記載されている場合には、雇用者の契約上の義務の一部として、かかる給付を従業員に与えなければなりません。

第二に、ボーナスの支給が会社の長年にわたる定例的な慣行であった場合も、従業員は、雇用者にボーナスの支給を要求することができます。フィリピン最高裁判所によれば、「定例的な慣行」と判断されるには、ボーナスの支給が長期間行われており、さらに、一貫してかつ計画的に行われていることが要件となります。雇用者が、従業員にボーナスを支給する法律上の義務がないことを十分に認識した上で、継続的な支給に同意していたことが、疑う余地のない形で証明される必要があります。

ある事件では、会社が1975年から2002年までの間、すなわち27年間、会社の収益バランスにかかわらず、給与3か月分のボーナスを従業員に支給していたことが明らかにされました。会社が、従業員に対してかなりの長期にわたりボーナスを支給してきたことから、会社は、一方的にかつ自発的に支給を継続してきた、と言うことができます。これに基づき裁判所は、ボーナスの支給は既に給付の一種となっており、会社側が一方的に撤廃することはもはや労働法違反にあたる、と結論付けました。Eastern Telecommunications Philippines, Inc. v. Eastern Telecoms Employees Union, GR No. 185665, February 8, 2012

あなたがフィリピンにおける雇用者であり、従業員の勤労と会社への忠誠を認めて、従業員にクリスマス/年末ボーナスを支給したいというのであれば、是非、そうなさってください。ただし、そのような給付を慣行として確立させたくはないという場合には、そのボーナスが会社から自発的に与えられる一回限りの報酬である、と従業員に明確に理解してもらう必要があります。そうしておけば、過去及び将来におけるボーナスやその他の報酬について、従業員が法的に要求する権利が生じることはありません。また、従業員がボーナスを受け取る際に署名する受領証に、従業員にもわかりやすい文言で上記条件を記載しておいてもよいでしょう。


*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。