第95回 租税条約による優遇措置活用に関する最新情報

皆さん、こんにちは。Poblacionです。フィリピンで配当金、利息又はロイヤルティによる所得がある外国企業に朗報です!最近、内国歳入庁(BIR)が、税務行政の整備及び改善に向けた取組みの一環として、フィリピン国内で得られる配当金、利息又はロイヤルティについて、外国企業が租税条約上の優遇措置を求める際の手続を改正しました。

従来、非居住者である外国企業が、フィリピン国内で得た収益について租税条約に基づく免税又は減税を受けたいと希望する場合は、まず、外国企業に認められている租税条約適用の申請(TTRA)をBIRに対して行う、という手続が必要でした。たとえば、あるフィリピン企業の株式を所有している日本企業は、そのフィリピン企業から配当金を受け取る場合、30%という通常の税率で最終源泉徴収税を納付しなければなりません。これに対し、日比租税条約に基づく一定の条件を満たしている取引の場合、日本企業は、10%又は15%という優遇税率の適用を受けることができます。ただし、日本企業がこの低減税率の適用を受けるためには、BIRにTTRA申請を行う必要がある上に、この申請は簡単なものではなく、申請が通るまでの手続に数ヶ月かかることもあります。

BIRメモランダム オーダー(RMO)27-2016により、上記手続が緩和されました。同RMOに基づき現在は、配当金、利息及びロイヤルティに関しては、TTRA申請を行う必要がなく、優遇税率の適用を直ちに受けることができます。収益金を支払う側(すなわち、配当金を支払うフィリピン企業、フィリピンのライセンサー又はフィリピンの債務者)は、単に、適用税率のとおりに源泉徴収し、当該税をBIRに納付し、必要な納税申告書を提出するのみです。

脱税防止のため、BIRには、優遇税制の適切な活用について定期的に税務調査を行う義務があります。そのため、収益金を支払う側は、優遇税率の請求を裏付ける下記の書類を保管しておく必要があります。

配当金の場合:
1. 領事認証を受けた居住証明書(すなわち、収益金を受け取る側が、フィリピンと租税条約を締結している国の居住者であること)
2. 配当金の通知に関する会社秘書役発行の証明書
3. 投資委員会登録(該当する場合)

利息の場合:
1. 領事認証を受けた居住証明書
2. 貸付契約
3. 投資委員会登録(該当する場合)

ロイヤルティの場合: 
1. 領事認証を受けた居住証明書
2. ロイヤルティ契約、技術移転契約又はライセンス契約
3. 投資委員会、PEZA又は知的財産庁における登録(該当する場合)

ただし、上記RMOは、非居住者である外国企業がフィリピン国内で受け取る配当金、利息及びロイヤルティにのみ適用されるものであり、営業利益、キャピタルゲイン等には適用されません。配当金、利息及びロイヤルティ以外の所得については、旧来の手続が適用されるため、現在もTTRA申請の承認が必要です。

適用の制限はあるものの、RMOによって外国企業が享受できるメリットは大きいでしょう。税務手続の発展及び改善に伴い、フィリピンにおける外国企業の投資及び事業活動がさらに促進されることが期待されます。


*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。