第96回 外国会社からの会社間貸付の確保
皆さん、こんにちは。Poblacionです。フィリピンで活動する企業がしばしば直面する困難の1つが、事業運営を支えるための、あるいは重要な設備投資を行うための資金を確保することです。この問題を解決する方法として、まず、フィリピンの銀行からの貸付を利用することが考えられるでしょう。しかし、この方法のデメリットとして、貸付を受ける会社が銀行から高金利を請求されたり、様々な担保を要求されたりすることがあります。従って、より優遇的で管理のしやすい長期の条件を希望する会社、特に外国企業のフィリピン子会社には、株主貸付のような会社間の外貨建貸付を利用することの方が、現実的な選択肢といえます。
貸付契約の作成に必要とされる特定の書式やテンプレートはありませんが、少なくとも、貸付契約の条件を書面にして両当事者が署名することが必要です。会社間における外貨建貸付については、利付きにすることも、無利子にすることもできます。ただし、無利子貸付にする場合は、フィリピン内国歳入庁には、税法に基づき、関連当事者間に利息収入があるとみなしてこれに対する所得税を課す権限があります。
貸付契約には、貸付金200ペソあたり1ペソの印紙税(DST)が課されます。DSTの納付期限は、貸付契約書が署名された月の末日から5日以内です。
また、事前承認及び/又は登録が求められる場合もありますので、注意が必要です。外国企業からそのフィリピン子会社への外貨建貸付は、以下に該当する場合に限り、フィリピン中央銀行(BSP、すなわち日本の日本銀行に相当する銀行)による事前承認を必要としません。
(i)市場志向型であること
(ii)何らかの政府機関又はフィリピン国内で営業する銀行による保証を受けていないこと
(iii)基準を満たしたプロジェクト/支出の資金に使用されること。
なお、BSPの基準を満たすプロジェクト/支出の例を以下にいくつか挙げます。
・輸出志向型プロジェクト(これにより、経済特区内の輸出企業は、通常、免税対象として認められます)
・フィリピン投資委員会に登録されたプロジェクト
・現行の投資優先計画に基づく優先投資分野
・現行のフィリピン中期公共投資計画に記載された活動
・工業団地及び経済特区の開発等
BSPの規則上、フィリピン企業が国外の関連会社又は子会社から貸付を受ける場合には、国外の親会社がその貸付を全面的に保証することが要求されます。
免税対象外の貸付の場合には、貸付契約書の署名予定日又は貸付金の引出し日のいずれか早い方の日の30銀行営業日前までに、BSPに対して貸付の事前承認を求める申請を行う必要があります。
さらに、外国からの貸付がBSPの事前承認を必要とするものであるか否かにかかわらず、貸付を受ける企業が、フィリピンの銀行から購入する外貨を利用して貸付金を返済することを予定している場合、外国からの貸付についてBSPに登録することが必要です。外国からの貸付の登録申請は、短期貸付(返済期限まで1年以内)の場合には貸付金引出し日から10銀行営業日以内、中期又は長期貸付(返済期限まで1年超)の場合には貸付金の利用から3ヶ月以内に、行わなければなりません。なお、貸付契約の承認及び登録については、第31回のコラムでより詳しく論じています。
皆さんがフィリピン子会社に対する貸付又はその他資金援助をお考えでしたら、どのパターンに当てはまるかをご検討され、上記した要求事項にご留意ください。
*本記事は、フィリピン法務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。 また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。 フィリピン法務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。