第38回 落とし物について〜その2
皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。
少し前に、台湾大学の総合スポーツセンターの辺りを散歩していて、リスを見かけました。その日は、日差しが痛い位の暑い日だったのですが、そのリスは、何かにかぶりついていました。なんだろうと思ってよく見ると、地面に落ちたライチにかぶりついてたんですね〜。思わず私は、「こんな街中にライチの木があるんだぁ」っていう軽い驚きを感じつつ、一方で「リスさん、いいもの見つけてよかったね〜」という穏やかな気持ちになって、暫し、リスを観察してしまいました。
ちょっとした散歩の時間に、こういう小さい発見をするのって楽しいですよね〜。私は結構好きなんです。もちろん、炎天下に屋外を長時間歩くのはしんどいので避けるのが賢明でしょうが、折を見て、街歩きをするのは、健康にもいいですし、よい気分転換になりますよ〜。
さて、本日も前回と同じく「落とし物」というテーマで書いてみます。前回、「台湾では落とし物が戻ってきて素晴らしい」というようなことを書きましたが、台湾でも日本と同様に、落とし物を拾っても届け出ることなく自分の所有物にしてしまうと犯罪になります。
日本でいうところの占有離脱物横領罪(落とし物の存在する場所の管理者などに占有がある場合には窃盗罪となるケースもあり)が成立します。
ただ、台湾で遺失物を自分の所有にしてしまう類型の犯罪は罰則が非常に軽いんです。なんと、500元以下の罰金ですんでしまいます。同様の場合、日本では、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金なので、その違いは大きいですよね。落とし物を拾って、自分の所有物にしてしまっても、最大で500元の罰金で済むなら、全く抑止効果がないように私などは思ってしまいますが、結局、ついつい自分の物にしてしまうことは人間である以上、非常にありがちであり、重い処罰はふさわしくないと台湾の立法部門は考えたのでしょう。このように、罰則に抑止効果がない状況下でも、落とし物が戻ってくる台湾は、さらに素晴しいということができるのかもしれません。
日本では、落とし物を見つけて届けてくれた方にお礼を渡すということは、慣習的にも存在すると思われますし、法的にも根拠規定があります。遺失物法という法律に規定があり、おおよそ「物件の返還を受ける遺失者は、当該物件の価格の百分の五以上百分の二十以下に相当する額の報労金を拾得者に支払わなければならない。」という内容が規定されています。つまり、3万円入りの財布を拾って届け出た方は、所有者から1500円以上6000円以下のお金を受けとる権利が日本では認められているのです(財布は無価値とします)。まあ、実際のところ謝礼は辞退される方も多いとは思いますが。
台湾においても、日本と同様、落とし物を拾った場合、落とし主に対して、報酬を請求できる権利があります。台湾では、民法に当該報酬に関しての規定があり、実際に認められる報酬は、拾った物の財産価値の10分の1を超えてはならないとされています。日本の方が、少し、報酬額が多いといえますね〜。
ちなみに日本でも台湾でも、拾った物について警察に届け出て一定期間経過しても落とし主が判明しない場合は、基本的には落とし物は拾って届け出た方のものとなります(例外はあります)。日本では、昔、1億円拾った大貫さんって方がおられましたね〜。落とし主は結局、名乗り出てこなかったんですよね。いやあ、完全に昭和の話なんで、若い方は聞かれたことないかもしれませんが、今回の話を書いていて思い出しちゃいました。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)
京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。