第55回 監視カメラ事情
皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。
少し前になりますが、台湾駐在や台湾で商売をされている日本人の懇親会に出席した際のことです。私の前職の職場であった静岡県のある地方都市の工場によく出入りされていた方と、同じテーブルでばったり出くわしました。その方と話したことはほとんど無かったはずですが、「見たことあるなぁ、この人」と「ピン」と来ましたね〜。よく見ていた顔とはいえ、15年も前に会っていた方を思い出せるもんですね〜。相手の方も、すぐ思い出してくださり、昔話に花を咲かせました。私が台湾で知り合った方の中にも、日本人会の新年会の際に、トイレで中学時代の知人と30年以上ぶりに出くわしたという話を聞かせてくださった方がおられました。台湾は比較的日本人が多く駐在等されていますので、昔の知り合いにばったり出くわす確率もそこそこあるんじゃないですかね。皆さまも「もしかして」と思ったら勇気を出して声をかけるのもよいかもしれませんよ〜。
本日は、台湾の街中の至るところで見かける監視カメラについて取り上げてみたいと思います。監視カメラなんてものは、普段、そんなに意識せずに生活していますが(意識して映らないようにするなんてできないですよね??)、改めて行動が録画されていると思うと少し嫌な気がしますよね。
最近、私が見た報道によれば、台湾全土の県、市に警察当局が設置した監視カメラの数は10数万台に上るそうです。これは、日本の警察が設置している防犯カメラの台数に比べるととんでもなく多い数であります(少し古い警視庁のデータが記載されている報道によれば、2011年末に日本の警察が設置していた街頭防犯カメラの台数は800台弱でした)。
台湾では、公的監視カメラの設置について、各県市が自らの自治条例を制定公布しており、条例に基づいて一定のコントロールはされているといえます。たとえば、台北市の録画監視システム設置管理自治条例によれば、主管機関は市政府警察局であり、公共安全、社会秩序の維持、犯罪予防及び捜査目的などの達成のために同システムは設置される必要があるとされています。同システムの設置場所は、警察局などにより半年ごとに公告され、録画データは別途法律の規定がある場合や、犯罪調査など継続保存の必要がある場合を除き、1年以内に廃棄されるということも規定されています。
しかし、これだけの監視カメラがあることが特に社会問題になっていないってことは、政府に監視されているようで耐えられないと思う人は、少数派に留まるということですかね〜。
防犯カメラを設置することで犯罪の抑止につながり、実際に犯罪が発生した場合にも犯人を特定したり、逃走経路を追うことで犯人の検挙につながるというイメージがあるのは確かだと思います。ただ、実際に真に効果があるのかについては、厳しく検証される必要があるでしょう。
日本でも、警察が設置したものではない、駅や空港、オフィスビル、マンション、商店街などの防犯カメラ台数については、実は300万台に上るという話もあり、日本全体で見れば、十分、防犯カメラ大国といえるのかもしれません。こんな数の防犯カメラがある日本ですが、現在まで監視カメラの設置・運用のあり方を定めた法律はなく、条例もわずかの市や区が設けているにすぎないようです。
なかなか実害がすぐあるわけではないので多くの方はあまり問題視されていないものと推測しますが、公権力が行う録画行為については第三者機関などでチェックを行う仕組みを検討するなど、歯止めについての検討は必要になってくると思われます。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)
京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。