第56回 ありがたい健康診断
皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。
選挙運動が盛り上がってますね〜。車だけでなく、バイクや自転車なども使った運動やテレビのCMなどでも候補者の紹介などが行われ、嫌でも選挙を意識してしまう毎日です。私の自宅前がたまたま里長候補者の事務所のようなものになっているのですが、先週末、いきなり数十人の人が示威行動でやって来ていて、20人以上の警察が警備にあたり、ものものしい雰囲気になるということがありました。どうも里長候補者の方が、暴力をふるったらしく(事実は定かではないですが)、暴力行為を糾弾する目的で多くの方が集まったようです。何事かと思いましたが、これも熱い選挙戦の一つの表れなんですね〜。その行動自体は、10分かそこらで終わりましたが、なかなか印象深かったです。
台湾における日系企業は、台湾人にとって人気のある就職先であるのは、まず間違いないと思います。給与は比較的、高めでしょうし(もちろん、日本語や英語などの能力が求められるなどのハードルはあるでしょうが)、福利厚生が充実している会社も多いからではないでしょうか。
例えば、社員旅行なども福利厚生の一つとして挙げられますが、会社によっては、なんとヨーロッパに出かけるところもあると聞いたことがあります。さすがに会社が全額負担しているということはないでしょうが、羨ましい限りですよね〜。その他、マレーシアやベトナム、日本なども人気の旅行先のようです。
その他、実は、台湾人従業員からありがたがられている福利厚生として健康診断が挙げられます。日系企業のすべてではないでしょうが、従業員に毎年、健康診断の機会を提供している会社は結構あるのではないでしょうか。これは、日本の法律では、従業員に毎年、健康診断を受けさせるよう、会社が義務付けられていることから、台湾でも同様に従業員に健康診断の機会を提供しているものと推測します。
台湾の法律においても、雇用主が労働者をして健康診断を受けさせる義務が課されてはおりますが、1年に1度、健康診断を受けさせることが義務付けられているのは、65歳以上の労働者の場合のみです。65歳って、労働基準法によれば雇用主が労働者を強制的に定年として退職させることも可能な年齢なので、実際にはほとんどの従業員に対して毎年、健康診断を受けさせる義務はないといえますよね。台湾の労働者に対し、どの程度の頻度で健康診断を受けさせる義務があるかが規定されている法規は「労働者健康保護規則」という法規なのですが、この法規によれば、40歳以上65歳未満の労働者は、3年に1度、40歳未満の労働者に至っては5年に1度、健康診断を受けさせれば、雇用主としては義務を果たしたことになっています。
つまり、台湾の法規からすれば、ほとんどの従業員に対して毎年健康診断の機会を提供する必要はないので、日本の感覚で、従業員に毎年、健康診断の機会を会社の費用で提供する日系企業は、福利厚生が充実した会社だと感じてもらえるのではないでしょうかね〜。
会社としても従業員に健康に働いてもらうために健康診断の機会を提供することはよいことですし、台湾社会全体としても労働者の健康に配慮することが求められていくでしょうから、いずれは台湾の法律の方が、日本のように毎年、健康診断の機会を全ての労働者に提供するように変わっていく可能性も十分にあると思います。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)
京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。