第75回 食事手当の非課税範囲
皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。
清明節の4連休を利用し、沖縄に行ってきましたよ~。沖縄は大人気の観光地で、台北からの行き返りの飛行機とも満席に近かったです。たまたまホテルの方に紹介されて行った石垣牛、アグー豚を売りにしている焼肉店には中国語を話すお客さんもおられました。その焼肉店の店員の方と話すと、「最近は中国人、台湾人のお客様がいないと店の経営が成り立たない」というようなことを言われていましたね。
他にも、タクシーの運転手の方からは、台湾から沖縄に来るクルーズ船のことを聞きましたし、沖縄と台湾との結びつきは相当深いものになっているのだなぁと感じました。今回の訪問は2泊だけでしたが、沖縄独特の雰囲気、食べ物を満喫することができ、非常に楽しい時間を過ごせましたので、また機会を見つけて訪れたいと思いました。
さて、本日のコラムですが、ある集まりで食事手当(中文では「伙食費」)の非課税範囲の変更に関してお話を聞く機会があり、多くの方にとって関心のある分野であると考えましたのでとりあげてみることといたします。
そもそも、食事手当について、すべての会社、雇用主が負担すべき法律上の義務があるかというと、台湾の法律上は、特に義務があるわけではありません。ただ、多くの会社では、一定の食事手当を支払っていると思われます。
そして、先月、財政部から出された通知によると、「食事手当について2400元までは従業員の給与所得(中文では「薪資所得」)とみなさない」、つまり、非課税とする範囲の上限額を現在の1人当たり1800元から2400元に拡大することが認められることとなりました。
この結果、どのような変化がもたらされるかですが、例えば、今まで食事手当を月に3000元受け取っていた人は、非課税とされる範囲が拡大することで、食事手当部分の課税対象収入が1200元から600元に減り、個人所得税の負担を減らすことができるようになります。会社側も拡大範囲の全てを費用として控除できる利点があります。
一方、政府の税収は確実に減ってしまいますが、それにもかかわらず、このような政策変更を行ったのは政府として会社側が享受できた税負担の減少分を、従業員の給与にまわしてほしいという期待があるのでしょうね。
ただし、会社側としては従業員の給与を上げる義務が財政部の通知によって課されたわけではありませんので、ご安心ください。従業員の給与についてはあくまで会社経営の観点から決定することが原則であり、昇給を法律によって決めるということは一般的には考えにくいです。
逆に、会社側として、今回の食事手当の非課税範囲の拡大に伴い、食事手当を増やし、基本給を減らす(支給総額は変更せず)というようなことができるかについて、上述の集まりで話題になったのですが、このような基本給の減額変更は台湾の法律上、従業員の同意なく行うことは許されません。労働基準法では「賃金については労使双方が取り決める。」との明文の記載がありますので、賞与などの計算においてベースの金額とされていることが多いと思われる基本給を減らすことは従業員にとっては受け入れられるものではないでしょう。よって、実際に、従業員の同意なく「食事手当を増やし、基本給を減らす(支給総額は変更せず)」ことは難しいですね~。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)
京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。