第76回 路上で芸を見せるには

皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。

たまたま気持ちのよい天気だったので、久しぶりに少しジョギングをしたのですが、途中で青年公園に立ち寄りました。この公園は、元々飛行場やゴルフ場だったという歴史があるだけあって非常に大きな公園で、老若男女、多くの人の憩いの場になっています。公園の中ほどには野球場があり、たまたま試合をやっていたのでのぞいて見ると、少年野球大会が開かれていました。対戦していたのは彰化県のチームと屏東県のチームでしたが、片方のチームの投手の投げる球は相当なスピードボールでしたし、どちらのチームのバッターのスイングも鋭く、鍛えられたチーム同士の戦いでなかなか見ごたえありましたね〜。

その球場は電光掲示板も備えた立派な施設で、投手が投げた球数まで表示されており、もしかすると少年のひじや肩を守るための球数制限のために使われているのかもしれません。選手の父兄だと思われる多くの観戦者が大きな声で応援していているのを見るのも楽しかったです。

皆さまも街を歩いていて、歌を歌ったり、楽器を弾いているパフォーマーを目にすることがあると思います。このような実演ですが、実は、許可を得て正式にやっている人とそうでない人がいるということを知りましたので、本日のコラムでは、公共スペースで実演をするための許可制度について紹介してみたいと思います。

少し調べたところ、県や市政府などがそれぞれに規定を設けているようであり、私は「台北市の街頭芸人が芸術文化活動に従事するにあたっての実施要点」(中文では「臺北市街頭藝人從事藝文活動實施要點」)という規定を確認しました。当該規定によれば台北市では、満16歳以上の者であれば国籍を問わず申請資格者であり、文化局が申請を受理した後、審議委員会によってパフォーマンスを実際に確認、審議することになっています。

面白いのは、この審議には、パフォーマンスを実演する場所の周囲にいる一般民衆も審議に参与することがあります。パフォーマンスを見た何人かの方に「好き」「嫌い」という2択の投票をしてもらい、「嫌い」が総投票数の10%に達した場合には、審議委員会が落選(不許可)の根拠とするということまで規定されていました。

台北市の場合、審議委員会の審議の結果、許可と判定されたパフォーマーは有効期限が2年の許可証を取得し、その許可は一定の条件を経れば更新されることになっています。この許可証を持っているというだけで、なんかアーティストって感じがしますよね(笑)。このような許可を得ず、路上で歌や楽器の実演をしたとしても、現状では特に罰則はないようで、警官に実演を止められるだけのようです。

ちなみに日本の公共の場所での実演についても少し調べたのですが、やはり地方自治体ごとの対応となっているようで、東京都などは年1回の審査でライセンスを取得すると、都が指定した場所で、音楽やパフォーマンスの活動をすることができるとされています(更新できるかまでは調べていません)。東京都生活文化局文化振興部という部署がホームページ上で、詳しい情報を公開していますので、ご興味のある方がチェックしてみてください。53施設68カ所を活動場所として開放しているとのことで、丸ビルや日比谷公園なども含まれていましたね。相当、いろんな場所でパフォーマンスができることが分かりますよ。

皆さまの中には尾牙のために歌やダンスを特訓された方や実は楽器の腕前がプロはだしという方もおられるでしょう。「せっかく磨いた芸を披露したい」という方は、許可を取得して公共スペースでのパフォーマンスに挑戦されるのも面白いかもしれませんね〜。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。