第84回 八仙楽園での事故

皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の外国法事務律師の佐田友です。

ここ最近、非常に暑い日が続いております。このような暑い時期には屋外のプールなどで遊ぶのはなかなか楽しいことのはずですが、先日、6月27日の土曜に八仙楽園で痛ましい事故が発生してしましました。

本日は、この事故について取り上げたいと思います。今までのところ、詳しい原因ははっきりしないようですが、結果的に大量のカラーパウダーを使用した八仙楽園のプールにおけるイベントで爆発、火災が起こり、500人以上もの若いイベント参加者が火傷を負い、本日現在、死者1人、重傷者も200人前後という多数に上るとの報道になっています。カラーパウダー自体を使っている人は世界中に大量にいるはずですが、このような大規模な事故になったケースは初めてかもしれません(少なくとも私は知りませんでした)。

今回の事故において、どのような犯罪が成立するかについて、少し考えてみますと、まず、イベント主催者である会社において、結果発生に責任を負う者が業務上過失致死傷罪と公共危険の罪に問われることはほぼ間違いないと考えられます。公共危険の罪とは、故意や過失などにより建物、バスなどを焼損させた場合に問われる罪を指します。

このほか、マスコミなどで今、話題になっているのが、イベント主催者にイベントスペースを貸していた八仙楽園の刑事上の責任です。八仙楽園に対しては観光局から既に行政上の責任として発展観光条例の関連規定に基づき一時操業停止が命じられ、観光遊楽業管理規則の関連規定に基づき罰金の支払命令が出される予定とのことですが、実際の事故が八仙楽園のプールで発生したからといって必ずしも八仙楽園が刑事上の責任や民事上の責任に問われるわけではないというのは感覚的にもお分かりいただけるのではないでしょうか。

例えば、ライブハウスなどの所有者が、バンドがコンサートをしたいということでスペースを貸したところ、そのコンサートで興奮したバンドメンバーが観客にダイブして観客が怪我をしたようなケースでは、ライブハウスなどの所有者が刑事上の責任を検察官から追及されたり、怪我をした観客から民事上の責任を追及されたりすることは考えにくいですよね。

しかし、今回のようなケースはライブハウスでコンサートを行うのとは異なり、イベントスペースを貸していた八仙楽園に刑事上の責任や民事上の責任があると判断される可能性があると考えます。その理由ですが、大量のカラーパウダーを使用するイベントを行うこと自体を知りつつ八仙楽園がイベントスペースを提供したものと考えられるところ、多くの人が参加するイベントでマッチやライターなどから引火し、事故につながる可能性を予見できていたにもかかわらず回避のための方策を講じなかったものと裁判所において認定されるかもしれないからです。

一般人はカラーパウダーが引火し、爆発事故を引き起こす可能性があるなどということは全く知らないことかもしれませんが、イベント主催者やイベント主催者にスペースを提供する者には、一般人より高度な注意義務が課せられていると検察官や裁判官は考えてもおかしくありません。しかし、昨日の報道によれば、検察関係者は「電気系統の問題で粉じんに引火したことが証明されない限り、追及は困難だ」と述べているそうで、八仙楽園の経営陣の刑事責任は問えない可能性が高まっているようです。

いずれにしろ、このような残念な出来事が二度と起きないように、今後、イベントの主催者などは、実施するイベントの安全性の検証を確実に行っていただきたいと思います。そして、実際に被害に遭われた多くの若い方が一日も早く元気になってくださることを心から願います。


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。