第94回 台湾の離婚事由〜その2
皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の佐田友です。
少し前の週末に、一般公開された総統府を見学に行きました。いつでも行けるだろうと思いつつ、結局、台北に住み始めて2年ほどになるタイミングでやっと見に行ったという感じです。建物の入り口には、微動だにしない衛兵が2人立っており、その真ん中に立って写真を撮らせてもらった後で建物内へと移動し、多くの人と一緒にいろいろな展示を見学しました。台湾と国交がある国からの贈り物なんかも展示されていましたね~(現在、台湾は22カ国と国交があると展示に書いてありました)。
また、総統府の近くの台北賓館(旧台湾総督官邸)も同じ日に公開されていたので、そちらにも足を伸ばし、豪華な部屋や大きな庭園などを見学しました。まだ行かれたことのない方であれば、一度くらいは参観されるのもよいと思います。ただ、その際には居留証やパスポートを忘れずにご持参下さい。かくいう私は、うっかり忘れていて、自宅まで居留証を取りに戻りました(涙)。
懲役6月以上の故意犯罪が事由に
本日は先週に引き続き、台湾の離婚事由について取り上げてみたいと思います。
台湾の民法においては、日本の離婚事由にはない離婚事由として、先週ご紹介したもの以外に「故意による犯罪により6カ月を超える懲役に処されたとき」というものがあります。「故意による犯罪」とのみ規定されているので、殺人や傷害という暴力犯罪だけでなく、窃盗や詐欺などの場合にも「6カ月を超える懲役に処される」可能性は十分にあります。このような規定が台湾の民法に明記されているのは、配偶者が故意に重い犯罪に当たる行為を犯してしまうような人間であれば、一方の配偶者は婚姻を維持しなくてもよいという価値観が一般的であるということかもしれません。
日本でも「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当するとして離婚が認められる可能性は十分にありますが、台湾には明確に規定があるのが面白いですよね。
それから日本では、不貞行為や強度の精神病にかかり回復の見込みがないという離婚事由に該当していたとしても必ず離婚が裁判で認められるわけではありません。場合によっては、裁判所が一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができるとされているからです。
この点、台湾の民法においては、日本のような「裁判所の裁量による請求棄却を認める」という明確な規定はありません。よって「故意による犯罪により6カ月を超える懲役に処されたとき」というような解釈の余地のない離婚事由に該当すれば、裁判で争うことで基本的に離婚が認められるものと考えます。
修復不能なら認める傾向
ちなみに、性格の不一致という理由のみで、裁判所が離婚を認める可能性は低く、これは日本も台湾も同じです。ただ日本の最近の裁判所は、結婚生活が破綻し修復不能になったか否かについて、多くの要素を総合的に考慮して、修復不能であると判断した場合には、離婚を認める傾向にあるようです。当然、裁判官によって判断が分かれるものと思いますが、「子どもの教育をめぐって夫婦が対立し、妻は夫を見ると心臓が波打つ状態になったとして離婚訴訟を提起し、妻の訴えが認められた」というケースもあったようです。
本当に修復不能な関係になってしまっているのであれば、早く離婚を認めるべきであると私も考えます。最近は、実際に性格の不一致に起因した離婚に関する争いが増えているようなので、裁判官の柔軟な判断に期待したいところです。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)
京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。