第95回 商売の形態「行號」~その1

皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の佐田友です。

台北のフリーペーパーを見ていると、最近、県人会の集まりの連絡先が記載されているのをよく見かけます。私は広島出身なので広島県人会に参加しておりますが、それ以外に大学時代を過ごした京都の会、妻の両親の出身という少し遠い縁で山形県人会にも顔を出させてもらっています。これだけでも「多いな!」と思われるかもしれませんが、実はもう一つ、会社員時代に工場勤務していた場所が掛川市だった関係で静岡県人会にも参加しております。

このような会に参加すると、いろいろ面白い話が聞け、楽しい時間を過ごすことができると思いますよ~。例えば、最近参加した静岡県人会で沼津辺りの出身の方から聞いたのは、「昔は(今はどうなのかまで聞きませんでした)高知の漁師などが、移動するカツオを追いかけて漁をしながら静岡辺りまで遠征しにきて、餌になるイワシを沼津で仕入れるために寄港するので、小さいころよくカツオを食べていた」というような話です。さぞかし、おいしいカツオを食べておられたのでしょうね~。皆さまも何かの縁で同じ時期に台湾にいるのですから、ふるさとの都道府県や、昔住んでいた場所の集まりに参加されてみてはいかがでしょうか。

「行號」というスタイル

本日は「行號(Hang Hao)」について取り上げてみたいと思います。「行號」って何?って皆さん思われますよね~。私も最近、たまたま「行號」について調べることがあったので、本日と来週の2回に分けて、「行號」がどんなものなのかについて紹介します。

「行號」は、多くの駐在員の方にとっては、業務の中で聞く言葉ではないかもしれませんが、台湾において個人が単独でまたは他人と共同で経営する小さな商売を指します。人によっては、「有限公司」や「股份有限公司」といった会社を設立する代わりに「行號」を設立して商売を行うというように理解いただければよいと思います。「行號」という言葉の代わりに「商號」と言ったりもするようです。街中で看板などに「○○商店」「○○商行」「○○企業社」「○○実業社」といった名称が掲げられていれば、「行號」である可能性があります。会社法にも、会社が「行號」と業務取引がある場合や短期融資の必要がある場合に、会社の資金を例外的に「行號」に貸し付けることができるという規定が存在しています。

普通に会社勤めしていれば、このような「行號」とは縁は無く、日本に帰国されるというケースがほとんどだと思いますが、例えば、脱サラして「台湾で飲食店を開業するぞ」というような方がおられれば、この「行號」という形態で商売を行うことも考えられるでしょう。台湾という場所はとても魅力的ですので、このような方がおられても不思議はありません。

小規模経営にメリット

「行號」という形態で商売をすることのメリットとして、どのようなことがあるかですが、おおよそ以下のようなことが挙げられるようです。▽経営陣の人数が少ないためコントロールしやすい▽資金が比較的少なくて済む(資本額が25万台湾元以下の場合資本証明は不要)▽設立手続きが容易で費用も安い▽統一発票を発行しなくてもよい場合(申請して許可を受ける必要あり)、営業税率は1%である(会社の場合および発票を発行する場合は5%)──。

外国人であっても経済部投資審議委員会の許可が得られれば「行號」は設立可能であるとされていますので、日本への帰任命令が出た後などに、「よっしゃ、台湾でラーメン屋で勝負するぞ~」というような方が、もしおられましたら「行號」のことを思い出してみてくださいね!!


*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。

執筆者紹介

弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。