第107回 医薬品の輸入販売など
皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の佐田友です。
私が台湾にやってきて2年以上になりましたが、まだ訪問したことのなかった高雄に先日初めて行ってきました。台湾高速鉄路(高鉄)の左営駅に近づくにつれ、進行方向右手にたくさんの煙突から煙がもくもく上がっているのが見え、日本の化学コンビナートを思い出しました。
日本だと川崎(神奈川県)とか四日市(三重県)、大竹(広島県)、岩国(山口県)、徳山(山口県)辺りに通じる風景ですかね。このような化学系の工場は海沿いにあるイメージです。少し前からだと思いますが、夜、ライトアップされた工場の様子を船から楽しむ「工場夜景」ツアーが流行っていますよね。私はまだ参加したことはありませんが、一度見てみたい気がします。
高雄とあまり関係ない方向に話が進んじゃいましたが、今回は短時間しか滞在できなかったので、いずれ妻と一緒にゆっくり高雄観光に訪れたいと思います。
日本の薬を「爆買い」
最近の流行語で皆さんも当然聞かれたことがあるであろう言葉として「爆買い」がありますよね。円安等の要因で日本に数多く訪問するようになった中国の方が日本で大量の商品を購入されることを指す言葉です(台湾の方も含めるんですかね…)。一部の会社では、今年の業績に中国、台湾を含む外国人観光客が多大なる貢献をしているのは間違いないことと思われます。
中国、台湾の方が多く購入される商品として、ブランド品や炊飯器などの家電製品があると聞いたことがありますが、他にもドラッグストアで薬なども大量に購入されているらしいです。私が今年、日本に帰国した際に、沖縄や広島でドラックストアに入ると、中国語を話す店員が待ち受けていましたから、人気があるのは間違いないと思っております。つまり、日本の薬は中国や台湾の方に非常に歓迎されているわけです。
そこに目を付けたある台中在住の女性が、「台湾で日本の薬を売れば儲けられるわ!!」と考えたのでしょうか、日本の友人に依頼して日本の薬を台湾に運んできてもらい、ネット上のオークションサイトなどを通じて販売したというケースがあったんです。販売したのは、点鼻薬4瓶、胃腸薬27瓶などで、金額にすると2万台湾元余りでした。
私はこのケースが報道されているニュース記事を読んだのですが、この女性の行為は台湾の法に触れていたものの、検察官が情状が良いと判断して、起訴猶予となり、法治教育課程に2度参加するという処分で済んでいました(この女性には前科はなく、態度も良好であったとのこと)。
輸入販売には許可が必要
今回この女性は、台湾の薬事法という法律に触れました。日本の医薬品が台湾に輸入された場合、同法における「許可を経ることなくほしいままに輸入した薬品」=「禁薬」という扱いになるんです。個人が自己使用のために輸入する場合は、自己責任ということで特に処罰されるわけではないのですが、許可を経ていない海外の薬を輸入、販売することは禁じられており、今回の女性のようなケースは法に触れてしまうんですね~。罰則も非常に重く、「禁薬」を販売した場合は7年以下の懲役に処し、かつ500万元以下の罰金を併科することができると規定されています。
ちなみに、台湾では医薬品のネット販売自体も認められていません。日本では、医療用医薬品以外の一部の医薬品はネットで販売することが許されているので、購入者の利便性向上に重きが置かれているといえそうですが、台湾はまだ医薬品の取り扱いについて厳格な運用をしているんですね。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)
京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。