第115回 台湾の不動産を買う中国人
皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の佐田友です。
春節(旧正月)の連休も終わり、気持ちも新たに頑張っていこうという、このタイミングですが、やはり台湾南部で2月6日の未明に発生した大きな地震に触れないわけにはいきません。結局、100人以上の方が亡くなられたとのこと、非常に残念に思います。亡くなられた方の大部分が台南の倒壊したビルにおられたわけで、人災的な側面があったのかこれから調査が進められるのでしょうが、亡くなられた方は戻られることはありません。旧正月を親しい人と祝い、楽しい時間を過ごすはずが一転、このようなつらく、悲惨な状況になってしまったわけで、本当に地震って怖いですよね。日本、台湾という地震が頻発する場所にいる限り、この感覚を心の片隅に置いておいて、いざというときに冷静に対処できるようにしたいものです。
夢のマイホーム
ほんの1カ月ほど前に行われた(なんだか随分前の出来事のように感じてしまいますが)総統、立法院の議員の選挙ですが、現状に不満を持つ若者が体制の変革を迫ったという側面があると報道されています。若者の抱える不満の一つとして、不動産価格が高騰し、普通に働いても住居を購入することが難しくなっているという現状があり、その高騰の要因として中国人など「陸資」の投機的な不動産購入があるという話をよく耳にします。ちなみに、中国語で投機的な不動産購入を「炒房」と言うそうです。
この話に関連し、そもそも台湾は中国人など外国人の不動産購入についてどのような制限を設けているか気になりましたので、少し調べてみました。
台湾の土地法という法律に一般的な制限が規定されており、林地や水源地や狩猟地などは外国人が所有することが原則できないものとされています(日本では、外国人、外国資本の会社であっても日本国内の水源地などの土地の所有権を取得することが認められています。このため、条例などで制限する自治体が増えているようです)。そして、林地や水源地などの土地以外の住居などの不動産については、台湾と平等互恵の関係にある国の人、会社による購入については認められております。「台湾と平等互恵の関係にある」とは、台湾の人や会社が当該相手国において不動産の購入が認められているのであれば、当該相手国の人や会社が台湾において不動産を購入することを認めるという意味です。日本や韓国などは完全に「台湾と平等互恵の関係にある」とされています。
裏技で取得
それでは、中国人はどうでしょうか。この点、中国人(会社も)は、その他の外国人とは異なり、両岸条例(正式には「台湾地区與大陸地区人民関係條例」といいます)という法規に基づき、主管機関の許可を経て初めて台湾において不動産の物権を取得できるものとされています(他にも順守すべき法規あり)。そして、実際に許可を得て中国人や中国の会社に取得された台湾の不動産物件は、2002年から14年までで160件あるとのことでしたので、全く許可がされないわけではありません。でも少ないですよね~、っていうか少な過ぎですよね!!
実際は許可を得なくとも、裏技で台湾の不動産を実質的に取得する中国人は相当な数いるとされています。私が見た記事で、その裏技が4つ紹介されていました。①台湾人や台湾の会社の名義を借りる②タックスヘイブンなど第三国の会社の名義を使う③二重国籍を利用する④台湾人と結婚して購入する──という4つです。このような方法を使った脱法的な購入がなされても、摘発することは難しく、また、罰則も両岸条例には規定されていませんので、中国人の不動産投資が一部、台湾に向かって行われているのは事実なのでしょうね~。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)
京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。