第124回 労働節の振替休日
皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の佐田友です。
先週14日夜に熊本で発生した地震は、九州でも大きな地震が起きることに驚きましたが、驚きはそれで終わりませんでした。なんと、その地震は前触れにすぎず、続けて阪神大震災並みの大きな本震が発生するという聞いたことがない展開で、多数の人命のみならず、熊本城、阿蘇神社などの文化財にも甚大な被害をもたらしました。交通網も機能しなくなり、自動車工場の操業などにも影響が出ているようです。報道を見ていると、最初の地震の後、やはり自宅がよいということで帰宅され、2回目の大きな地震で自宅倒壊のため亡くなられた方もいるとのこと。本当に残念です。熊本やその周辺の方々が一日も早く穏やかな日常を取り戻されることを心から希望します。
今年の労働節は日曜日
本日は、間もなくやってくる今年の台湾の労働節(労働者の日)が日曜日に当たることから、その振り替え休日についてどのように考える必要があるのかを紹介したいと思います。
そもそも労働節が休日となる根拠ですが、台湾の労働基準法、同法施行細則にあり、「記念日、労働者の日およびその他の中央の主管機関が定める休日とすべき日は、休ませなくてはならない(労働基準法の第37条です)」「本法(労働基準法を指します)第37条でいう「労働者の日」とは、5月1日のメーデーを指す」とされていることから、使用者は5月1日に労働者に対し休暇を与える必要があることになります。
それでは、今年のように5月1日が日曜日であれば、労働者は休暇を得ているとして、別途、振り替え休日を与えなくてもよいのでしょうか。
休暇補充を義務付け
この点、昨年12月に労働基準法施行細則が改正され、明確な法的根拠が規定されたのですが、休日とすべき労働者の日などが労働者の所定休日に当たる場合「休暇を補わねばならない」(中文では「應予補休」)との規定ができました。つまり、日曜日を休日として与えている場合、今年の5月1日が日曜日に当たるため、別途、振り替えで休日を与える必要があるといえます(仮に対象の従業員が日曜日が休日ではなく、毎週水曜日が休日ならば、5月1日を休ませればそれでよく、当然、振り替え休日を与える必要はありません)。
ちなみに、振り替え休日をいつに設定するかは労使双方の合意で決めればよく、5月2日にしなければならないわけではありません。もし、皆さまの会社において振り替え休日を設ける予定がなかったということであれば、法律違反になってしまいますので、ぜひ設定するようにしてくださいね〜。
日本は日曜日のみ対象
日本に関していえば、5月1日はメーデーとして、組合から動員をかけられたりはしますが、特に祝日ではありませんよね。ゴールデンウィークの真っただ中なので、祝日にしてもよさそうなものですが、なぜか最近新たにできた祝日も8月11日の「山の日」でした。祝日を増やしたいなら狙い目のようにも思うのですが、あえて祝日としない理由が何かあるのかもしれません。
なお、日本の祝日の振り替えですが、法律に明確に規定があり、「『国民の祝日』が日曜日に当たるときは、その日後においてその日にもっとも近い『国民の祝日』でない日を休日とする」とされています。つまり、「国民の祝日」が土曜日に当たるときに振り替えがなされないことの根拠もこの規定なんですね。多くの会社が週休2日となり、土曜日も休日となっていることから、「国民の祝日」が土曜日に当たるときにも振り替えればよいのにと個人的には思いますが、この法律の条項の改正を待つ以外にはないようです。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は当事務所にご相談下さい。
執筆者紹介
弁護士 佐田友 浩樹 (黒田日本外国法事務律師事務所 外国法事務律師)
京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日・中・英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。